【3】心の闇

25

 空は二階の部屋に俺を案内した。二階は全部で五室。階段を上がってすぐの部屋が空の部屋だった。


 南向きの明るい部屋だ。広さは十二畳。広いバルコニーもある。室内はダークブラウンのフローリングの床に淡いブルーの壁紙。シングルベッドと机、ソファーとテレビとドレッサー。


 一番重要な教科書は、部屋の隅に山積みされ放置してある。


「ずいぶん広い部屋だな。俺のアパートより広い」


「広い?どこが?窮屈で嫌になるよ」


「贅沢だな。机の椅子に座って。教科書を広げて今授業でやってるところを教えてくれ」


「まじで、勉強する気?」


「当たり前だろ。俺は家庭教師だ。早く教科書を出して」


「めんどくさ」


「女子なんだから、その言葉使いを何とかしろ」


「うざっ」


 空は溜息をつきながら、教科書を取る。


「で?何処まで進んでる?」


「最後まで」


「は??」


「だから、最後まで。彼氏いるんだから当たり前でしょ?真ちゃん、イマドキの中学生をみくびらないで。それとも真ちゃんはまだ未経験とか?」


 最後までって……?

 性的なことか?

 噓だろ。

 この目は、俺をからかって遊んでる目だ。


「ふざけるな。勉強の話だ」


「なんだそうなの?彼氏とどこまで進んでるのか聞きたいのかと思った」

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