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 この俺がエロいだと!?

 社長の前で、何てことを言うんだよ。


「空、いい加減にしなさい。そうやって悪態ついて、何人も家庭教師に辞められたでしょう」


「は?辞められたってなに?あたしが家庭教師をクビにしたのよ。アイツらは口先ばっかで、役に立たないから」


 十五歳で家庭教師を解雇するとは、親が親なら子も子だ。


「あのね。西本さんとは半年契約にしたから、半年は解雇できないからね。教科は英語と数学でいいのね?」


「は?何で勝手に決めてんだよ。半年も真ちゃんが家庭教師?誰も頼んでないし」


 俺を名前で呼ぶ空。しかも『ちゃん』付けだ。完全にバカにしている。


「空!」


 さすがの社長も、空を叱りつけた。

 叱られて当然だよ。


「礼、まじでウザい。ていうか、真ちゃんにあたしの家庭教師が出来るの?あんまり賢そうに見えないけど。三十歳で大学四年って終わってるよ」


 ケラケラ笑ってる空に、黙って聞いていた俺もさすがにキレた。


「あのさ、仮にも自分の母親を名前で呼び捨てにするのはどうかな?ていうか、その態度は何?初対面の大人にする態度じゃないよね」


「母親?礼はあたしの親じゃないよ。礼は同居人」


「義理でも母親だろ。同居人だなんて、社長に失礼だろ」


「煩いな。まじ勘弁。あんたこそさっさと帰りなよ。今日でクビにする」


「残念ながら、俺は帰らないね。半年契約で家庭教師を引き受けたんだから。英語と数学の問題集は買って来たから、ほら時間が勿体ないだろう。部屋で勉強するよ」


「はぁ?意味わかんない。帰れ」


「空、西本さんは帰らないわ。最近成績がガタ落ちだよ。このままだと附属高校に進学出来ないからね」


「あれは本気出してないからだよ。内部試験なんてチョロいに決まってる」


「つべこべ言わなくていいから。ほら部屋に案内しろ」


 俺はソファーから立ち上がり、空の腕を掴んだ。


「は?イテテ……手を引っ張るな!セクハラで訴えてやる」


「はいはい。いいから行くよ」


「西本さん、宜しくお願いね」


 社長はこんなに悪態をついている空に、優しい笑みを向ける。


 職場での冷酷な顔とは別人みたいだ。メイクしていない顔は、年齢よりも若く見え穏やかな表情。生意気な空に対しても、社長は普通に接している。


 戸籍上は義理の母娘。でも実際は他人同士の二人。歳の差も十六歳しか離れていない。複雑な関係だよな。

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