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「ごめんなさい。驚いた?驚くわよね。この子が、娘のそら。中学三年生。高身長だし態度も大きいし、メイクしてるから大人びてるでしょう」


「……えっ?か、彼女が?中学生!?」


 空はストレートの髪を人差し指で触りながら、俺を上目遣いで見た。その眼差しはどう見ても男に色目を使っているようにしか見えない。


「何よ、何か文句あるの」


「いえ、別に……」


 完璧メイクの十五歳にスッピンの社長。俺はすでに混乱している。


「それで、あんたが家庭教師の先生なんだ?名前は?」


「西本真です。歳は三十歳だけど大学四年生だよ。来春から進学塾の講師になる予定だ。宜しくね」


 俺は右手を差し出したが、空はチラッと見ただけでプイッと顔を逸らした。


「三十って、何年留年したんだよ」


「留年はしてないよ。二十六歳で大学受験し、入学したんだ」


「はあ?二十六歳で入学?何年浪人してんだよ。それにスーツなんて、そんなダサい格好して来なくていいよ」


 ていうか、留年も浪人もしてないし。


「超似合わない。僕ちゃん七五三?みたいな」


 クソ、俺は三十歳の大人だ。この生意気な女子中学生にガツンと拳骨をおみまいしたい。


「それで、真ちゃんさぁ、あたしに何を教えてくれるの?」


「し、しんちゃん!?」


「そう、真ちゃんでしょ?得意分野は何?顔はイケてるから、得意分野は女遊びとか?」


 空は俺の顔を覗き込むように、ニヤニヤ含み笑いをしている。大きく開いたTシャツの胸元を、わざとこちらにチラつかせ、ニヤッと口角を引き上げた。


「……エロッ、今、胸見たでしょ」


「はっ?」

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