19
チャイムを鳴らすと、インターホン越しに社長の声がした。
「はい、どちら様ですか?」
落ち着き払った社長とは対照的に、俺の緊張は増す。
ヤバイ、足がガクガクしてきた。
「あの……西本です」
あまりの緊張に声がうわずった。
以前勤務していた家電量販店で、初めて接客をした時のような緊張感だ。
「西本さんね。今、門を開けるから、玄関に回って下さい」
「あっ、はい。わかりました」
正門はその直後、自動でスーッと開いた。
庶民の俺には無縁の世界が、この門の先に広がっている。
綺麗に剪定された植木に、玄関ドアまで続く広いアプローチ。ガーデニングの雑誌に出てくるような美しい庭。数種類の薔薇の樹が玄関まで続いていて、色とりどりの美しい花を咲かせている。まるで英国のプライベートガーデンだ。
玄関に着いたと同時に白いドアが開いた。ドアの内側に立っていたのは茶髪でストレートヘアの女性。
バッチリメイクをした顔は、大きな二重の目に濃いブルーのアイシャドー。ふっくらとした唇にはピンク色の口紅。濡れたようにテカテカと光っている。
女性にしては高身長で、スレンダーな体に密着した胸元の大きく開いたTシャツに、太股丸出しのミニスカート。どう見ても成人女性だ。
社長には中学生の娘と、成人した娘がいたとは、そこまでは知らなかった。
義理の親子関係だと聞いていたが、社長と顔立ちが似ていなくもない。俺は彼女の匂い立つような色気に一瞬ドキッとする。
彼女は何枚も重ね合わせた長い付け睫毛を数回瞬きさせたあと、表情を一変させ俺を睨んだ。
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