【2】生意気な小娘

15

 ――翌日――


 大学のゼミがあり、奈央と二人で登校する。


 バイクの後ろに乗り、背後から俺に抱き着いている奈央。生ぬるい風を切りながらバイクを走らせる。九月になり若干涼しくなったとはいえ、まだ暑さを感じる。


 バイクを大学の駐輪場に停め、奈央と校庭を歩いていると、友人の高木雄一たかぎゆういちが声をかけてきた。


 高木は奈央と同じ二十二歳だ。

 長身でスポーツ万能、今どきの若者という感じで、どこか浮ついていてチャラい。


「奈央!おはよう!西本さん、お久しぶりです!今日も仲良く登校ですか?本当にラブラブですね。俺も同棲しよっかな」


 同級生だが年下の高木は、奈央にはタメ口だが俺には敬語を交えて話す。


「雄一、おはよう」


 奈央が高木にニコッと笑いかけた。高木は一年の時に奈央に告白して撃沈したと、高木から聞いたことがある。


 そのせいか、奈央を見つめる高木の眼差しがやたらと気になってしかたがない。


 そんな可愛い笑顔を、高木に向けるなよ。

 誤解させるだろう。


「奈央の笑顔は、どんな朝食よりも美味うまい。空気も甘いスイーツみたいだよ」


 奈央の目の前でクンクン匂いを嗅ぐ変態男。

 奈央はクスクス笑いながら、高木を見つめる。


「やだ。意味わかんないこと言わないで」


「奈央の笑顔を見たら、腹いっぱいになるって意味だよ。西本さん、独り占めするなんてズルいですよ。俺にもお裾分けして下さい」


 ますます意味がわからない。

 俺と奈央は同棲しているんだ。


 を独り占めして当然だろう。


「ねぇ、雄一、知子は?」


 木島知子きじまともこは、高木の彼女だ。

 彼女がいながら、奈央に色目を使うとは。


 内心苛々しながらも、年上の俺はどっしりと構えた振りをする。

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