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「家庭教師ならMILKYで働く前に何度か経験したことあるし、社長から頼んできたんだよ。半年契約だから安心して」


「MILKYの社長さん、ファッション雑誌に載ってたよ。本屋で立ち読みしたけど、美人だよね。それにまだ若いし、中学生の娘さんがいるようには全然見えなかったけど」


「夫の連れ子らしい。社長の夫はバリバリの実業家。資産は何百億って噂だからな」


「何百億!?それは凄いね。私達とは別世界の人なんだ。でも、これで日曜日に真とゆっくりできる。嬉しいな」


 奈央は俺の首の後ろに腕を回しギュッと抱きついた。可愛い女だ。


 俺は奈央の唇を優しく塞いだ。


「やっぱり外食しよう。明日は家庭教師だし、ゆっくり外食するのは無理だから」


「わかった。出掛ける支度するね」


 奈央はにっこり微笑み、部屋の隅っこで洋服を着替え始めた。ストンと足元に落ちたジーンズとピンクのTシャツ。下着姿の美しい肢体が視界に入る。


 白い背中と括れたウエスト、丸みを帯びたヒップが白地に赤い花柄のワンピースに包まれる。奈央は背中のファスナーを上げて欲しいと、俺に目で訴えた。


 俺は首の後ろにキスを落とし、ワンピースのファスナーをゆっくりと上げた。


 ◇


 アパートを出て二人で手を繋ぎ、駅前のファミレスに行った。高級レストランに連れて行けるほどの余裕もなく、俺達の唯一の贅沢といえば駅前のファミレスだった。


 同棲してるのだから、ファミレスで長時間寛ぐ必要もないけど、ハンバーグのセットメニューとドリンクバーで、気がつけば三時間くらいそこで過ごすこともある。


 年齢の差はあるが、一緒にいて癒やされる女性。優柔不断で何をしても中途半端な俺を立て、どんな時も尽くしてくれる。


 奈央は俺には勿体ないくらいの女性だ。


 外食してアパートに戻り、ガス代節約のために二人で狭い浴槽に入浴し、ベッドで寄り添い愛し合う。


 奈央の鼻にかかった甘い声は、男の欲望を掻き立てる。平生は甘え上手で可愛い女なのに、ベッドの中では大胆になる。美しい肢体も揺れる体も、俺を満たしてくれた。


 いつまでこんな甘い生活が続くのだろう。

 夫婦になると愛情は冷めるというが、奈央とならいい関係でいられそうだ。


「真、おやすみなさい」


「おやすみ」


 奈央が俺の胸に縋り瞼を閉じた。俺はそんな奈央を優しく抱き締め額にキスを落とす。


 この細やかな幸せがずっと続くものだと、この時の俺はそう思っていた。

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