真side
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「ねぇ
ベッドの中で爆睡中の俺を揺り起こしたのは、俺の彼女、
俺は
高校卒業後、第一志望の公立大学教育学部の受験に失敗し家電量販店に就職したが、職場に馴染めず退職。中途半端な人生をリセットするために二十六歳の時に再度公立大学教育学部を受験しリベンジを果たし、現在に至る。
将来は高校教師を目指していたが、子供のいない伯父に『経営する進学塾の後継者になって欲しい』と切望され、暫くは講師として務めることになった。
即ち、大学四年生でありながら、同級生はほとんど八歳年下だ。三十歳過ぎの学生ライフ、親に援助を求めるわけにはいかず、社会人として働いていた時に貯蓄した金とアルバイトで何とか細々とやりくりをしている。
「真ってば。起きて」
今日は日曜日だ。大学はない。
奈央に揺り起こされ、俺は眠い目を擦りながら重い瞼を開いた。
「……んっあ、今何時?」
「真、もう十時だよ?」
「えー嘘!?何でもっと早く起こしてくれないんだよ」
俺は寝過ごしてしまったことを奈央のせいにして、シングルベッドから飛び降りた。
「そんなこと言われてもしらないよ。もう人のせいにしないでよね。目覚まし時計止めたのは真なんだからね」
少し舌足らずで甘えたような声が、今朝は耳障りに感じ、俺は不機嫌なまま洗面所に向かう。
築年数の古いボロアパートの南向き角部屋、日当たりは最高だが、歩く度にフローリングの床がキュッキュッと音を鳴らした。
元々一人暮らしだったため間取りは一DKしかない。七帖の洋間に半間のクロゼット、三帖のキッチン、バストイレは別になっている。
八歳年下の奈央と暮らしていることは、親には言えず、双方の両親には内緒で同棲をしている。もちろん好きだから一緒に暮らしているわけだが、親の仕送りを十分に得られない奈央の金銭的な負担を助けるためでもあった。
俺達は早々と就職の内定も決まり、半年後には卒業を迎える。就職したら、もう少し広いマンションに引っ越すつもりだった。
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