第3話
ヅラを
だからヅラチョイだと教えてもらったが受け入れたくなかった。
拓真と和正の話によると、ここは日本で
間違いなく、俺とこいつらは変わらず友達だ。だが普段の世界と違う点が1つある。
この世界の男は全員ヅラだということだ。
太古より男には髪の毛は生えておらず、
男がヅラを被る事は世界万国共通の習性らしい。
赤ちゃん用や小学生用のカツラを販売しているほどヅラは世に親しまれていた。
「しかし、驚いたわ。駿が急におかしなったと思ったら変なこと言いだすしな」
「本当だぜ、ヅラチョイも知らないから
本気でどうかしちまったと思って病院に
連れてくか考えたぜ」
あの後、俺は拓真と和正に朝から感じていた不可思議な出来事を感情に任せてぶつけたのだ。
すると2人は最初は首を傾げ、俺の話を信じなかったが、俺の髪が地毛だと伝えて引っ張らせたら目の色を変えて信じはじめた。
嘘だろー!と拓真が俺の髪を触りに触り、
ノーベル賞や、と和正は、なに学賞が貰えるんだとツッコミたくなる事を呟いていた。
「それじゃあ俺は地球上でたった1人の
髪の毛が生えている男という事なのか? 」
「そうだ」
「せやな」
ため息を吐き出すと共に頭を抱える。
どういう世界なのだ、全ての男がハゲている
世界など聞いた事もない。
ライトノベルのように異世界に行くなら、
もっと中世のヨーロッパのような街並みの
魔法が普及しているファンタジー色強めの
世界に行きたかった。
「パラレルワールドってやつやな」
「パラレルワールド? 」
拓真と和正が俺を置いてけぼりにしながら
推理を始めていた。
「並立世界の事や、例えば俺が朝ごはんに
パンを食べたとする。
でも別の世界の俺は白米を朝ごはんとして
食べた世界があるかもしれへん。
その他にも違いがある並立した世界が
多くあるって言われてんねん」
「その1つ1つのあるかもしれない世界が
パラレルワールドって事なんだな」
「その通りや、だからおそらく駿は
元の世界から俺たちの世界、
【世界中の男がハゲでヅラを被る世界】
に来てしもうたんやろ」
「はぁーなるほどな、じゃあ駿はどうやったら元の世界に帰れるんだ? 」
「それは分からん」
他人事だからといって当の本人の目の前で
軽く言いやがって。
少し愚痴を言ってやろうかと考えていると、何かを思い出したかのか、拓真が急に
こちらを見つめた。
「じゃあ駿まずくないか?今日は全校朝礼が
あるから、あの3人のヅラ見たら
とんでもないことになるぞ」
ヅラを見たら、とんでもないことになるって一体どんなヅラだ?
だが拓真の真剣な顔を見たら口が自然と閉じた。
「ほんまや‥忘れてた。ヅラケットが
できてへん状態でトップ3を見るのは、
むざむざ殺されに行くようなもんや」
ヅラケットって何?そして俺死ぬの?
ツッコミどころが多いのだが2人の眼差しは
まるで日本の将来を憂う政治家のように
真摯に前を見つめているため、ツッコミを
入れてよいのか判断がつきにくい。
「ヤバイな、今から基本的なヅラケット
だけでも身につけないと駿の未来はないぞ」
ねぇ、死ぬの?俺今から戦場にでも行くの?
「少ない時間でどこまで教えられるか分からんけど、出来ることだけは伝えるわ」
こちらにグーサインを向ける和正と任せろと言わんばかりに胸に手を当てる拓真。
なんかムカつくが、2人の話を聞くことにした駿は覚悟を決め、異常な世界に向き合う姿勢を作ろうとしていた。
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