お題小説

たん

氷柱

 液晶画面の向こう側、この文言をご覧の皆様。今回はこの「お題小説」という作品を手に取っていただき、私は誠に有り難く存じております。キャプションの方にも書き留めておきましたが、この作品というものは、私の溢れて止まぬ創作意欲、それに批准せぬ両の眼が見ることのできる景色をさらに広げ、このカクヨムという佳作の吹き溜まりとも言えるインターネットサイトに、私の拙作で一石を投じたく思い、企画立案を行った次第にございます。


 さて、今回のお題ですが、この茹だるような初夏には滅相も似合わぬ氷柱つららというもの。これは私の学友であるA氏から頂戴致しました。彼には平素から奇人の気はございましたが、いやはやまさか、あのような暑さが猛る昼下がりに、ましてや氷柱などという言葉が出るとは、流石の私とてつゆほども思わず、仰々しく魂消てしまったものにございます。きっと彼には、この暑さも、氷柱が垂れるほど寒々しくあれば、気兼無く過ごせているのになぁ、という、一種の退廃的な思想があったに違いありません。


 お時間を取らせてしまって申し訳ない気持ちはありますが、ここで一つ、皆様にお詫びしなければならないことがございまして。これは私の悪癖であるのですが、何かしら文章をしたためる時分の前置きというものが、非常に長たらしく読みづらいものになってしまうのです。自身のみで書き、読み、この手で作品の生涯を閉じるのであれば、そこには一切の問題も在りませぬが、あくまでこれは人様にご覧いただくための対外的な作品にございます。読み易さ、というものは、えてしてそういった概念には必ず付き纏うものなのです。


 このようにたらたらと文言を書き連ねていては、折角このような愚作に目を通していただいている皆様にも飽きが来てしまうかもしれない。そうなる前に私は、早い内にオチを付けれるように筆を走らさなければなりません。いや、困ったものです。私は話をまとめるといった行為をひどく不得手としておりまして。オチの見当たらない話をされることほど、不快であり、時間の無駄であるものはこの世にございませんから、やや、これは素晴らしい、と思えるようなそれをさっさと付けてしまいたいのですが、如何せん思う通りにはいかないものです。しかし。時にはそれもまた一興かも知れませんな。何せ、皆様に訪れる飽きを越えてなお筆を走らせていれば、まるで氷柱が落ちるように、話のオチも上手くまとまるといったものですから。


 では、これにて。

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