第25話 Cafe time in Hanoi(ハノイでカフェタイム)
タンロン遺跡の出口からそう歩かないところに大きな公園が近くにあった。その対面に雰囲気のよさそうなカフェがあった。観光客や現地の人がカフェタイムをしていた。早速、僕と山田もその店でレストすることにした。
店の入り口で待っていると、ボーイが席まで案内してくれた。
僕「山田君、このカフェでいいですか。雰囲気がよさそうだからね。」
山田「もちろんです。ここにしましょう。感じよさそうですね。」
僕「メニューはここにありますね。どのドリンクにしますか。なんだか歩き疲れた感じですよね。」
山田「じゃ、俺は、アイスベトナムコーヒーにしてみます。酒井さんは、どれにしますか。」
僕「そうだなぁ。ぼくは、トロピカルアイスティーにしますよ。アジアンって感じですよ。」
山田「それもいいですね。」
僕は店員へオーダーした。ファンディンフン通り沿いの席へ僕と山田は座った。カフェと通りは赤色、ピンク色やパープルの色合いのブーゲンビリアや南国の花々の垣根で区切られている。垣根は膝ぐらいまでになっていた。そのブーゲンビリアの花々に蝶が舞っている。その自然な景色と、席から見る外の都市の景色は反比例するような光景となっている。
ちょうどロータリーの近くの席に僕と山田は座っている。目の前の道路では、車やシクロ・馬車・バイクなどが入り混じり交差している。こういう景色ってホントにアジアに来たって感じがする。一様、ハノイ市内では信号はあるので、無秩序な交通渋滞はおこってない。南国の日差しの下、芝生に着いた水滴が、南国の太陽を反射しキラキラと輝やいてる。なんだか神秘的な光景が出来上がっている。
山田「酒井さん、この席いい感じですね。それに席から見えるこの景色、東南アジアって感じがして、オリエンタルな異国感がすごく伝わってきます。」
僕「そうですよね。東南アジアって感じですね。パワーを感じますね。ただ、大気汚染が気になるところではありますけどね。」
山田「そういえば、ハノイへ来てから気になっていたことがあるんです。」
僕「山田君、何ですか?何が気になっているんですか。」
山田「ハノイ市内の空気が霞んでいる感じがずっとしているんですよね。これって大気汚染ってことですかね?前にも言ったと思うですが、すごく気になっているんですよ、俺。」
僕「そうだよね。僕もずっと気になっていたんだよね。この交通量だから大気汚染って可能性あると思うよ。PM2.5とかすごそうだけどね。だから、ハノイの人たちはマスクをしている人が多いよね。」
山田「この状態では、マスクだけではだめだと思うんですけど。」
僕「山田君と同じですよ。東南アジアは急激な生活環境向上により、大気汚染が進んできているっていうしね。中国の大気汚染は、今では生命が危険な域に達していますからね。」
山田「そうでしたね。生活水準が上昇するのはいいとは思いますけど。自然環境が破壊されていくのは大変残念ですね。その国を責めることはないですが、周りまわって人間を苦しめることになるんですけどね。」
僕「経済発展途中の国では、自然環境までは気が回らないですよね。経済成長することで精一杯ですからね。」
山田「なんだか、残念ですね。いつも俺、思うんですけど、どうして人間は自然と共存しようと思わないのかなって。自分たちの欲望の追求を優先するのかって思うんですよね。」
僕「僕も山田君に同感ですよ。この地球に生きているのは人間だけじゃないんですからね。人間もこの地球の中のサイクルの一つなんですよね。」
こんなたわいもない話をカフェのオープンテラスに座りながら話を続けた。ハノイ市内では、あちらこちらで割と芝生などの手入れが行き届いていた。
僕「ところで山田君は、ハノイに来た印象はどうでした?現時点のですけどね。」
山田「俺にとって初めての海外ってこともあって、ワクワクドキドキの連続ですよ。ほんの数日前まで東京の大学に通っていた俺が、今、ベトナムのハノイにいるってことが不思議でたまらないんです。日本では味わえないリスクもありますしね。いかに日本が安全かって実感していましたよ。先ほどのタクシーのようにね。」
山田「酒井さんとの出合いは、俺の人生の中ですごく刺激的でしたよ。いろいろな体験をしましたしね。他人って感じがしないんですよね。」
僕「僕も同じですよ。出国のフライトの席が隣だったところが、そこから今回のストーリーは始まっていたんですよね。というか、僕がカンボジアからベトナムへ渡航先を変更したのも運命のいたずらだったのかもしれないですね。」
山田「俺もなんとなく選んだハノイなんですけど。このなんとなくってことが、もう運命だったのかもしれないですよね。俺と酒井さんが出会うために。」
僕「本当に不思議な出会いってあるもんですよね。入国はそれぞれ別々だったのに、また、ホアンキエム湖で偶然に出会ったってことも不思議なことですよね。あの時、二人の時間がちょっとでもタイミングがずれていたら、偶然の再会もなかったってことですもんね。人との出合いって本当に不思議ですね。」
僕と山田は、そんな会話をこの異国のハノイでしているってことが、本当に不思議に思えた。日本にいたときは、お互いの存在自体を知らなかったのに、ベトナム ハノイという外国で、初めてそれぞれの存在に気が付かされたことに本当に不思議さを感じる。
僕は、明日、いよいよ日本へ帰国となる。なんだか後ろ髪をひかれる感じになった。この感覚も異国への旅ならではの感情である。
今回のハノイの渡航は、いつものビジネストリップとは違った。人との出合いだけでなく、僕の動物的感により不思議な体験がホントに多かったからだ。こんな短期間にこんなにもタイムトラベラーのような感覚は、今までになかったからだ。
山田「酒井さん、明日は日本へ帰国される日ですよ。俺、明日から一人でベトナムにいると思うとなんだか不安を感じちゃいますよ。」
僕「そうですか。山田君なら大丈夫ですよ。僕と同じ動物的感が鋭いですからね。」
山田「それじゃ、今回は、ハノイでいろいろとお世話になったので、俺が今晩の食事をごちそうさせていただけますか?」
僕「ありがとう。でも、そんなに気を使うことはないですよ。」
僕は、山田のこういった人を思う優しさに惹かれる。現在の日本では山田のような礼儀節度をわきまえ、律儀な若者は本当に珍しいと思う。
山田「いいえ、本当に、俺、酒井さんにいろいろと教えていただいたし、助けていただいたのでお礼がしたくて。」
僕「そうですか。そう思っていただけてうれしい限りですよ。山田君って若いのによく気が付くよね。本当素晴らしいと思うよ。ご両親がきっと素晴らしい方なんでしょう。そういった家庭で育ったことには、感謝しないとですね。」
山田「親には感謝していますね。でも酒井さんにそんなに褒められるとこっぱづかしくなっちゃいます。それじゃ、今回は俺が店を決めていいですか。」
僕「もちろん、お願します。山田君のセンスの見せどころですね。」
山田「またまた酒井さん、そんなに俺へプレッシャーをかけないでくださいよ。実は、ホアンキエム湖の側に行ってみたい店があったんですよ。そこでいいですか。」
僕「もちろん、そこにしましょう。この後、ホアンキエム湖までは歩いて行ける距離ですから、散歩がてら歩いて行っちゃいましょうか。」
山田「そうしましょう。そろそろカフェを出ますか。」
僕「そうしましょう。今、16:15なのでいい時間ですよね。陽も先ほどよりは少し落ち着いてきた感じもしますね。」
僕と山田はカフェを後にした。
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