第22話Market encounters and events(出会いと出来事)

山田「酒井さん、ここがドンスアン市場みたいですね。あっという間に到着しましたよね。俺、思ったほど遠くなかったように感じちゃいました。昨晩、夜市で民族音楽の舞台があった場所ですよね。」


僕「そうだよね。ここだよ、市場は。市場までの道のりも面白かったですね。興味深かったよ。ベトナムの朝の景色が見られてよかったですよね。」


山田「ハノイの朝の景色を垣間見られた感じでよかったです。市場の周辺は、やはり活気に満ちていますね。すごい熱気ですよ。俺なんだか上がってきちゃいました。」


僕「ドンスアン市場は、ハノイ最大の市場なので活気には満ち満ちていますよ。その雰囲気でこちらまで気分が高揚し、僕もなんだかワクワクしちゃいますよね。アジアの市場って感じの佇まいです。なんだかホットする感じです。落ち着きますね。」


市場の周辺は、人の多さと物品を搬送する車やバイク、自転車もごった返して行き来をしている。市場から帰る人を待つタクシーもかなりうろうろしている。馬車や乗り合いバスもたくさん行き来をしている。交差する人々の会話、あちらこちらから聞こえてくるクラクションの音、まさに人が生きているっていう躍動感が伝わってくる。


ドンスアン市場のメイン入り口の前は大きなロータリーになっている。ロータリーは、更にごったがえしている感じである。ロータリーに沿って食べ物屋の露店が軒を連ねている。これぞ、アジアン市場だ。僕と山田へ市場の活気が伝わってくる。日本には、現在ではこんな場所はあるのかなって思うぐらいだ。躍動ある気が満ち溢れている。


山田「酒井さん、なんだかわくわくしちゃいます。市場へ早く入りましょうよ。」

山田は子供のように目をキラキラさせている。若者の好奇心が全開に出ている様子をヒシヒシと感じ取れた。


僕「そうしましょうか。市場の周辺もかなり活気がありますね。香辛料や香草の香りが入り混じっていて、何とも言えないですね。これぞアジアって感じがします。」


山田「さすが東南アジアの市場って感じがします。俺の好奇心が全開になっています。やっぱ、酒井さんに付いてきてよかったです。」


市場の入口を入ると、両サイドにはチョコレートやベトナムコーヒーを売っている店が所狭しと並んでいる。昨晩、夜市の露店でも売っていたベトナムコーヒーがあった。市場で買った方が安いので、それは後程購入しようと思った。


市場の奥へどんどん進んでいくと、観光客用のお土産品から徐々に日用品へと商品が移っていく。今回、ドンスアン市場へ立ち寄ったのもベトナム雑貨で目新しいものがないか探すためでもあった。東京や大阪で開催されるギフトショーなどでは、なかなか見つからない現地オリジナルの興味深い雑貨は、やはり現地へ入らなければ見つからないものだった。この市場でどんなものに出会えるのか楽しみであった。


山田も目を右往左往ときょろきょろしながら、店を物色しているようだった。


山田「酒井さん、ローカルな市場の中って面白いですね。ベトナムの日常生活が垣間見れますね。お土産もいろいろとあり、あちらこちらに目移りしちゃいます。」


僕「入口の店のあたりでチョコレートやベトナムコーヒーを買って帰りますよ。夜市などで購入するよりは安そうだしね。」


山田「酒井さん、そうですね。昨晩の夜市の露店で売っていたものが、かなりありそうですしね。」


市場の中の様子を説明すると、店は個人営業のようで、ある程度仕切りがあるようではあるが、ほぼ無秩序状態である状態だ。そのウナギの寝床のような通路をすり抜けるように、観光客や現地のお客は物品を品定めをしていく。あちらこちらで、ベトナム語で会話が飛び交っている。英語では通じない様子である。


観光客相手の店は英語でも多少大丈夫そうだが、そういった店は現地の人が購入する価格よりかなり高くなる。市場の床は、コンクリートの打ちっぱなしのようだ。クーラーはかかってないが、ひんやりとしている。天井が高いだけあって、熱気がこもらない構造になっているようだ。四方のから、出入りできるようになっている。


僕は折角なので、僕と山田は別々に市場の中を探索することにした。山田も一人で見てみたいと思っているだろうから。


僕「山田君、1時間ぐらいそれぞれ別々で店を探索しましょう。待ち合わせ場所は、市場中央にある吹き抜けのここにしましょう。今、10:00だから11:00にここで待ち合わせでということでいいですか。」


山田「わかりました。そうしましょう。俺、酒井さんと離れるとちょっと不安ですけどね。それじゃ、1時間後にここで。おもしろい雑貨を探してきますよ。楽しみでわくわくしちゃいますよ。後程。」


僕と山田は1時間という間それぞれ別々の行動をしばらくとることとなった。僕は、早速、市場の入口にある店へ戻った。そこには雑貨店とお土産用のチョコレートなどを売っている。土産店では、気になっていたブリキの三輪車の置物と、立体の絵葉書が気になったので購入した。店員との値段の交渉をしながら僕はこの感覚ってやっぱ好きだなって改めて思った。


続いて、チョコレート店へ立ち寄った。その店の店主のおばちゃんは、韓国系の女性のようだった。僕へ英語で話しかけてきた。


店主「おにいちゃん。チョコレートを安くしとくよ。どうだい。お土産に買っていきなよ。みんなに配れば喜ばれるよ。これ食べてみな。おいしいから。」


僕「そうですか。それはいい考えですね。僕は、ベトナムコーヒーも探しているんですよ。お土産用にたくさん配れるようなものがいいですよ。そういった感じのものはありますか。」


店主「これなんかどうだい?ベトナムコーヒーを一回づつのワンパックに小分けにしたものだから、ベトナムのコーヒーの代表的な味だよ。たくさんはいっているよ。それはそうとまぁ、おにいちゃんここに座りなよ。」


と言って、店主はブリキのイスへ座るように勧めてくれた。


僕「ありがとうございます。このコーヒーは、ベトナムコーヒーですか。おいしいですか。数は結構入っていますね。いいですね。」


店主「もちろんさ。うちのコーヒーだからおいしいに決まっているじゃないか。自信もって商売してるからね。」


僕「それは頼もしいですね。」


僕は、この店主が作ったコーヒーではないんだけど、ただ売っているだけなんだけどねと思っていた。ああだ、こうだと店の店主と僕が話していると、すると突然、横から日本人のおばちゃんが、僕と店主の会話に割り込んできた。


日本人おばちゃん「お兄ちゃん、日本人?いつからハノイへ来たん?この時期に日本人がハノイにいるのって珍しいよ。」


僕「はい、日本人です。この時期はあまり日本人いないんですね。僕は、ハノイへはおととい到着しました。明日には帰国しますけどね。」


日本人おばちゃん「短いね。もっと時間があれば、ベトナムもいろいろと見どころはたくさんあるからね。私は、昨日、カンボジアのシェムリアップからハノイへ入ったんだけどね。今は、カンボジアのシェムリアップという町に住んでいるんだよ。一時帰国で日本へ帰る途中、ハノイへ立ち寄ったんだよ。カンボジアのシェムリアップから日本へは直行便がないからね。ちょっと不便だよ。でもそのおかげで、道草ができたって感じだよ。」

僕「そうなんですね。今回、僕もカンボジアのアンコール・ワットへ行ってみよかと思っていたんですが、日本での仕事もあるのでなかなか時間が取れず、今回は時間の都合でハノイどまりにしました。シェムリアップって、アンコール・ワットの入口の街ですよね。」


日本人おばちゃん「そうだよ。東南アジアの三大仏教遺跡だからね。アンコール・ワットはすごくいいよ。あの遺跡群は圧巻ですよ。世界遺産になることはあるね。死ぬまでに一度は訪れる価値はあるよ。おにいちゃんも若いうちに行っときな。年を取ると遺跡巡りは体力的にきつくなるからね。足腰が強いうちにだよ。あそうそうあ特に朝日に照らされるアンコール・ワットの景色は最高だね。」


僕「そうなんですね。東南アジアの三大仏教遺跡なんですね。インドネシアのボロブドゥールとカンボジアのアンコール・ワット。そうそうミャンマーのバカン遺跡ですね。来年は、是非、訪れてみたいと思いますよ。東南アジアの遺跡には以前から惹かれるものがあったんですよね。なんだか理由はわからないんですけどね。なんとなくいかなきゃって感じがするんですよ。」


僕は、こんなベトナム ハノイの市場で、まさか日本人と出会うとは思ってなかった。僕と同じ時間、空間でまさにここで会うなんて何か不思議な感じだ。僕へ気軽に話しかけてくるなんて、これもまた何かの縁なのだろう。


日本人おばちゃん「この市場は値段が安いみたいだよ。ハノイは、カンボジアより物価は高いけど、日本に比べたらまだまだ安いからね。おにいちゃんは、お土産買ったん?」


僕「そうですよね。お土産用のベトナムコーヒーを探しているんですよ。どこかいいお店をご存じではないですか?紅茶でもいいんですけどね。」


日本人おばちゃん「それなら、ベトナムコーヒーの専門店が並んでいるストリートが近くにあるみたいだから行ってみるいいよ。名前は何だたっかわすれちゃったよ。市場より品質がいいものが安く買えるから。通りの名前はなんて言ったかな。ちょっと思い出すから。やっぱり思い出せないよ。年のせいかね。」


僕「いえいえ、まだお若いですよ。」


日本人おばちゃん「おにいちゃん、うれしいこと言ってくれるね。私も久しぶりに日本人と話せてうれしかったよ。ありがとね。」


僕「ありがとうございます。ベトナムコーヒーのストリートは、タクシーの運転手へきいてみますから、大丈夫ですよ。連れと後でいってみます。」


日本人おばちゃん「じゃね。おにいちゃん。わたしも買いものしなきゃいけなんで、行くね。」


僕「いろいろありがとうございました。情報を。」


店主「おにいちゃん、ところでチョコレートはどうする?」


僕「このチョコレートを1キロください。連れと待ち合わせの時間になりますので、これで失礼いたします。」


店主「おにいちゃん。お買い上げありがとうね。気を付けて!」


日本人おばちゃん「おにいちゃん、気を付けてハノイをたのしみな。」


僕「いろいろありがとうございます。そちらもお気をつけて。」


と、僕はその店でとりあえずチョコレートを購入した。時計を見ると間もなく待ち合わせの時間となる。


早々に僕は店を後にし、山田との待ち合わせ場所へ向かった。山田より僕が先に待ち合わせ場所へ到着した。間もなくすると山田もビニール袋を持って、待ち合わせ場所へと来た。


山田「酒井さん、お待たせいたしました。楽しかったですよ。物の値段が安くてなんだか、すごく得した感じです。かなり満足しましたよ。酒井さんは何か買いましたか?」


僕「お土産用のチョコレートを1キロ買いましたよ。買ったのはいいんですけど、ホテルに帰るまでに溶けなければいいんですけどね。この暑さじゃ、無理でしょうけどね。山田君は?そうそう、僕はブリキの自転車の模型を2つ買いましたよ。ベモをモチーフにしていますけど。インテリアにいいですからね。まぁ、甥っ子たちのお土産ですけどね。」


山田「俺は、昨日夜店で売っていた絵葉書とベトナム雑貨を何点か買いました。かなり安かったですよ。あと、バッチャン焼の陶器も購入しました。俺の部屋にいい感じであいそうだったので。お香も買っちゃいました。日本へ帰国してベトナムを再現したくてです。ハノイでの酒井さんとの思い出もですけどね。こういう五感に訴えるものって、かなり印象に残りますからね。」


僕「それはよかったですね。満足していいただけて良かったですよ。市場って、楽しいでしょ。現地の不思議なものなんかもありますからね。やはり現地でないと見つからないものってありますからね。それじゃ、今からどうしましょうかね。このままタンロン遺跡にでも行ってみようと思いますけど、いまから行っても大丈夫ですか?」


山田「是非とも、お供させていただきます。旧ベトナム城のタンロン遺跡ってドンスアン市場から近いんですか。」


市場の入口へ向かっている途中、山田が、突然、足を止めた。


僕「どうした?山田君。」


山田「今、金縛りにあっちゃています。足が動かないんです。声はまだどうにか出ますけど。どうしよう。」


山田の顔は青ざめていた。


僕「ちょっと待ってね。簡単な除霊をするから。安心してください。大丈夫。」


僕は山田を落ち着かせ、ぼくの息を山田に吹きかけ、首の付け根を三回、僕の気を集中させ叩いた。そうすると山田はすぐに動けるようになった。


山田「酒井さん、ありがとうございました。本当に助かりました。」


僕「人通りが多いところは、プラスもあるけど、マイナスもあるんですよ。つまり、陽の気も集まるけど、それとともに陰の気も集まってくるんですよね?人の思いの陰の部分もありますからね。集まっちゃうんですよね。」


山田「そうそう、先ほどの除霊の時、酒井さんの吹きかけていただいた息から、すごくいい匂いがしました。フルーティな感じでしたよ。俺、なんだかムラムラしちゃいましたよ。」


僕「またまた山田君、冗談なんだから。それはそうとさておいて、人の思いはね、山田君が言う通りで、まさにその通りですよ。陽と陰は紙一重ですからね。そう考えると人間の思いって怖いというか面白いですよね。人間の業って本当怖いですよね。でも、すぐに金縛りが解けてよかったですよ。」


山田「本当にありがとうございます。酒井さんがいらっしゃらなければ、どうなっていたのでしょうね。」


僕「そうだなぁ。今頃、違う世界に引き込まれちゃっていたかもしれませんね。」


山田「怖いこと言わないで下さいよ。酒井さん、冗談きついんだから。」


僕「それじゃぁ、行きましょうか。ドンスアン市場からタクシーで行っちゃいましょうかね。ガイドのフォーさんが言っていたタクシーを探しましょうかね。赤いラインが入ったタクシーですよ。」


山田「はい。結構、タクシーが多くて、どれだかよくわかりませんね。ファンさんが言っていたタクシーも割と安全というだけで、当たり外れがあるってことですよね。日本とは違うってことですよね。」


僕「そうですね。たぶんね。どちら側に転ぶかは楽しみですね。それも旅の醍醐味ですからね。」


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