第21話 Morning view of Hanoi(ハノイの朝景色)

今朝も昨日のように、近くの鶏の鳴き声で目が覚めた。僕は朝起きたら、一番初めにすることがある。それは、朝一番の心地よい風を体に染み渡らせることだ。6Fにある僕の部屋の窓を開けると、ハノイの朝のさわやかな風がさっと部屋に入ってくる。その風は僕へ気持ちいい感覚を与えてくれた。


風水的にも朝日の陽を浴びると、体中にプラスのエナジーを太陽から吸収できるといわれている。体内時間が整うともいわれる。僕は、太陽の方向へむき、朝日を思いっきり体に浴びた。


その後、しばらくベッドの縁に腰を掛けた。早朝のハノイは、まだ朝のラッシュが始まる前の穏やかな雰囲気であった。その空気感を僕は楽しんだ。僕は、朝のシャワーを浴びないとスターターできないため、バスタブへお湯を入れた。丁度いい温度だ。おそらく40度ぐらいである。その中に僕は体をゆっくりと、湯船につからせる。思わず「あぁぁ」と声がでる。この朝のバスタイムは、僕にとっては朝の儀式のようなものである。


寝汗もしっかりと流し、朝食のブッフェへ向かうため、8Fへエレベーターに乗り向かった。


ハノイ旧市街エリアの建物は3Fから4F建てものが多い。観光客用のホテルだけは高層の建物になっている。ということで、レストランのあるホテルの8Fからの眺めは、ハノイ市内を遠くまで見通せる。遠くへ見えるホテルまでは、遮る建物はない。何だ立地になった気分だ。気分も上々である。


朝食はというと、昨日と同じビュッフェスタイルである。好きなものを好きなだけ食べられる。僕は子供の頃からパン食だったため、朝からライスは食べられない。


いつものようにパンを選択した。もちろん、ベトナムのモチモチしたフランスパンである。僕の今朝のメニューは、ベトナムフランスパン、オレンジジュース、スクランブルエッグ、ヨーグルト、新鮮果物(スイカ・マンゴー・バナナ)と最後にベトナムコーヒーとした。


これだけ朝食を食べれば、昼まで歩き続けても、エネルギーはかなり大丈夫そうだ。僕が座っている席で、今日のスケジュールを再度確認していたところ、中年の日本人男性が話しかけてきた。


男性「日本人の方ですか?」


僕「そうです。今朝食が終わり、スケジュールの確認をしていたところですよ。いつからハノイへ来られているんですか。」


男性「私は一昨日、ホーチミンよりハノイへ来ました。ハノイは、ホーチミンと違い古都を感じさせますね。落ち着きを持った独特の雰囲気がある場所ですよ。なんだか日本でいうところの古都京都のようですよ。」


僕「そうですね。今回、ベトナムは初めて来たのですが、なかなか日本人の感覚に合ういい場所ですね。まだ僕はハノイしか知りませんけどね。」


男性「お気に召しましたか。それはよかった。私は、今回、NPO法人の仕事でベトナムへ来ているんですけどね。」


僕「そうだったんですね。お仕事では、ゆっくりとベトナムの観光旅行とはいきませんね。お仕事を頑張ってください。お話の途中、すみません。少々急ぎますので。これで失礼いたします。良い一日を!」と、話が長くなりそうだったので、僕は、早々に話を切り上げた。


僕は、早速、部屋へ戻り本日の出発の準備を整えた。


ドンスアン市場の中を徘徊するので、まずは、軽装であることが第一だ。水を常に持っていないと熱中症になっちゃう可能性も高くなる。水分は必須である。念のために虫よけスプレーは持っていたのがいいですからね。蚊が媒体となる感染症も多くなっているからだ。世界で一番人類を殺しているのは「蚊」であるためだ。虫よけスプレーも必須である。更に市場などへ行くと蚊以外の感染症媒介の虫もたくさんいると思うのでその対策にもなるからだ。念のために、お金も二つに分けて持ち歩くのが今日は良い感じがした。これは僕の直感だが。


僕は、早々と準備をし、エレベーターを待ち6Fから1Fへ移動した。ホテルのフロントのウエィティングルームのソファーに座った。ルームキーをフロントへ預け、山田が来るのを待った。ソファーでくつろいでいると、まもなく山田が現れた。山田は若いだけあって汗をかいても相変わらず、さわやかな青年という空気感を醸し出している。若さを感じる景色であった。うらやましく思った。


山田「酒井さん、おはようございます。お待たせしました。今日はまたお供をさせていただきます。足手まといにならないように気を付けます。」


僕「おはようございます。山田君。こちらも今来たところですから。こちらこそよろしくですね。今日は市場を徘徊するから楽しみですね。こちらのホテルまでは迷いませんでしたか。」


山田「大丈夫でした。昨晩、ホテルに戻る途中、客引きがしつこくて困っちゃいましたけど。どうにか客引きを交わしながら、ホテルに戻るとベッドに座るなり、バッタンキュウで寝入っていました。今朝は、昨日のように近くで飼っている鶏の声で目が覚めましたよ。」

僕「僕も近くで飼っている鶏の声で目が覚めていますよ。その鶏って、同じ鶏だったりしてね。」


山田「俺もなんだかそう思いますよ。」


僕「さあぁ、出かけましょうか。今日は、昨日よりいっぱい歩いちゃいますからね。市場まではこのホテルから歩いて40分程度です。タクシーにしますか?それとも歩きにしますか。僕は一様歩きのつもりですけどね。山田君はどっちがいいですか。」


山田「もちろん俺も歩きですよ。歩きながら市場まで向かうと、ハノイの朝の風景が体験でしますからね。ハノイっ子の日常生活が垣間見れそうで楽しみです。酒井さん、ラジャー!」


僕「水は持っていたのがいいですよ。それにまめに水分を補給してないと、熱中症などになってしまいますからね。途中、コンビニエンスストアで買っておいたのがいいですよ。ドンスアン市場にもあるでしょうが、冷たくないと思いますからね。」


山田「はい、準備万端です。途中、コンビニか雑貨店へ寄ってもいいですか。つめたい水を買いたいんで。そうそう水も虫よけスプレーは万全です。デジカメも持っていますから、大丈夫です。今日も写真を撮りまくって、俺の神瀬で感じ取ったハノイの景色を残したいです。」


僕と山田は、僕の滞在しているホテル前の道、ハンポ通りをホテルから出て左方面へ向かって10分程度歩いていく。


すると、2つ目の十字路に突き当たったところで、ハンドゥオン通りに突き当たる。ハンドゥオン通りをさらに左に曲がってひたすら進んでいく。そうして歩くことしばらくするとドンスアン通りに到着する。


今日の目的地の一つでもあるドンスアン市場へは、その通りに入ると、迷うことなく到着する予定だ。僕の滞在しているホテルから徒歩で、おおよそ40分弱ぐらいで到着するはずであった。日本だったら40分も歩くことはない。東京であればタクシーに乗っているだろう。


でも、今僕と山田はベトナムにいる。今日の一番目の目的地、ドンスアン市場へまでは歩いていくこととなる。二人ともそちらの方が、ハノイの街の日常の空気感を体で感じ取れるから歩きにする。ドンスアン市場へ続く道というのが昨晩の夜市のメイン通りでもある。それに通りはきれいに舗装されているので歩きやすくもあった。通りの両サイドには、露店ではなくきちんとした店が所せましに、開店している。その店店を見ながら歩くのも楽しい。


やはり、昼と夜とでは、周りの景色がこんなにもかわるのかと思うほどの代わり映えである。ハンドゥオン通りに朝のさわやかな風がさっと吹いてくる。通りの両サイドの街路樹の葉をそっとなびかせている。その街路樹を飛び回る小鳥たち。その小鳥のさえずりもなんだか僕の心を癒してくれる。


僕と山田に朝のさわやかなパワーを吹き込んでくれるようだ。頭上からキラキラと降り注いでいる南国の太陽の光。その南国の光は、僕たち人間に元気を与えてくれる。朝も早いってところなので、ハノイの空はまだスモッグで澱んでいない。本当に気持ちがいいと僕は思った。これぞ、南国の醍醐味だと実感した。


通りの両サイドには、観光客向けの雑貨店、カフェのようなお店、ハノイっ子が利用する雑貨店、花屋の屋台、屋台で朝食を食べているベトナム ハノイの人たち。これから仕事をする準備をしている人たち。バイクで急ぐ若者。僕はこの風景を見ていると、みんな一生懸命、生きているって感じる。


耳をすませば、あちらこちらで朝の活気のある会話が聞こえてくる。何を話しているかはわからないけれども、おそらく朝のたわいのない会話であろうと予測がつく。


ベトナムのガイドブックでよく見かける藁で作ってあるベトナムの傘を被った中年の女性が屋台を引きながら花を売っている。南国のきらびやかで色鮮やかな花々である。


そういった光景を眺め僕と山田が歩いていると、なんだかゆっくりとした時間の流れを感じとれる。山田もすごくこの景色を楽しんでいるようで、鼻歌を歌っていた。その歌はRain」だった。秦さんの歌だ。この歌は僕が落ち込んでいるときに、元気づけてくれる歌だ。歌の好みも山田と一緒なんだろうか。山田との出合いは、本当に不思議だ。


そんな中、ふと気が付いたことがあった。通りの両サイドのお店では、陶器のブタの貯金箱を売っている店が多い。風水では、ブタの貯金箱は金運を招くものとして扱われる。ベトナムにも風水の名残があるのかと感じ取れる光景だった。そのブタの貯金箱はおそらくバッチャン焼だと思う。ブタの貯金箱に紛れて、ドラエモンやキティちゃんなど日本で有名なキャラクターの貯金箱も置いてあった。なかなかかわいい感じではあったが、おそらく著作権などは無視されたコピー商品だとおおよその予測はつく。


僕と山田は、そんな景色を楽しみながら、ハノイの街の日常の空気を感じながら歩いて行った。そうこうしているうちに、目的地のドンスアン市場へあっという間に到着した感じだ。


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