第17話 From the past to the present(過去から現代へ)

僕と山田とファンさんは停船している港へと向かった。先ほどのNo36の船へ戻り、鍾乳洞のタウゴー島を後にした。僕は、島を離れるとともになんだかもの悲しいメランコリックな気持ちになった。徐々に島が僕と山田の視界から遠ざかっていく。島の船着場から湾を出るあたりで、あのベトナム人の少年の意識が、僕と山田へインスピレーションを伝えてきた。


少年「ありがとう」と、一言伝えてきた。僕は、これと言って何をしたというわけではないが、その少年にとっては、少年のその思いを僕と山田に伝えられて、成仏できたのかなって思っていた。その瞬間、僕は、少年の存在を感じたあたりから、今日のこのさわやかなブリリアントブルーの青空へと煙のように姿が消えていくのを感じた。それと同時にその少年の後を追うように、まさに虹のように他の人の魂が付いて行くのを感じた。僕はこれでベトナムの少年が探し続けた彼の妹さんやご家族も成仏できたのかなと思い、涙がでそうになった。


山田「酒井さん、今、先ほどのベトナム人の少年が、俺の意識の中に出てきて、「ありがとう」ってインスピレーションを伝えてきました。これって少年が成仏できたということなんでしょうか?」


僕「今、山田君と同じタイミングだと思うけど、僕の意識の中にも先ほどの少年の意識が入ってきたよ。同じく「ありがとう」って言っていましたよ。なんだかやり切れない気持ちにはなりますが、これで少年がこの青空へ向えたというのであれば、それはそれでよかったと思いますね。」


山田を見ると「こくり」とうなずいていた。その様子はなんだか弟っぽく、僕をほっとさせる光景だった。


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