第10話 Hanoi's First Night(ハノイの初夜)

どうにかこうにかで滞在ホテルに到着した。僕はホテルのドアを開け、フロントへ向かった。ホテルの中に入ると、僕は絡みついていた湿度を含んだ空気感から解放された。


ホテルのフロントのボーイさんへ訊ねた。

僕「ベトナム ハノイでは、路上では英語は通じないよね。」


ボーイ「ホテルであればどうにか通じますが、一般の人たちは、やはり英語では無理ですね。ベトナム語のみですね。」と回答があった。思った通りだった。


僕はフロントでルームキーをボーイから受け取り、僕の滞在している605号室へと向かった。


エレベーターの中では、ヨーロッパ人の夫婦が一緒だった。「どちらからですか?」などと、たわいのない会話をしていた。こういった会話も一人旅をしているって実感できる。エレベーターが6Fのフロアーへ到着し、ヨーロッパ人の夫婦とはそこでお別れとなる。「GOOD NIGTHT」と笑顔で。


僕は部屋に入ると、早速TVをつける。ベトナム語の放送が流れてきた。何を言っているのか意味はわからないが、そのテレビから流れるベトナム語の音のリズムが、僕の好奇心を躍動させるいい感じの音感で、独特の雰囲気を醸し出し僕の旅情を掻き立てている。なんだか異国を感じる。僕は明日の準備をしていると、そうこうしているうちに眠りへと落ちていった。


その晩、僕の夢の中では、明日行く予定のハロン湾の光景が浮かんできた。旅行へ行くときはよくあるのだが、僕はデジャブーを必ず見る。まだ行ったことのない場所であるが、あたかも今その場所にいるかのような景色、あとはそこでの会話などを夢の中で体験する。勉強でいうところの予習みたいなものだ。


夢の中で、現代に生きている風には見えないベトナム人の親子の姿が現れた。その親子からは、緊張感が伝わってくる。母親らしき女性が、僕に何かを訴えているのだったが、音声が全く伝わってこない。何かを言っているのだけは、夢の中の空気感で感じ取れる。


ただ、その母親から伝わってくる悲しみのインスピレーションが、僕には明日のハロン湾クルージングに何かがつながっているような気がしてならなかった。第一話はそこで終わった。


次に、どこの島かわからないが、ベトナムの少年が僕に何かを伝えたがっている夢だった。夢の中では何を伝えてきたいのかはわからなかった。ただ、その少年も悲しみと恐怖感が僕に伝わってきた。


夢うつつの中、気が付けば朝焼けの日がカーテンの隙間からさしてくる。朝になっていた。なぜか目覚めた時、僕の足の裏には土が付いていた。僕が周りを見渡すが、ベッドの周りには土なのではなかった。

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