第3話 Premotion of Encounter
僕は、窓側の席だった。
僕の隣に座る人ってどんな縁で、今日一緒のフライトになったのかと考えるとなんだか楽しくなってきた。
と、考えていると、隣に僕より若い男の子って感じの今時な大学生が座った。その子は、夏休みも終わり、海で日焼けをしましたって感じで小麦色の肌色だった。連れはいなさそうなので、一人旅なんだろうなと、その時、僕はそんな感じに思うぐらいだった。
僕は、東南アジアへは仕事でもプライベートでも割と出かけることが多い。行く先々ではその土地その土地の臭いっていうのが、入国すると僕の体に絡んでくる。
今回のハノイは、どんな香(におい)がするのか楽しみでもあった。僕は、途上国独特の現地のパワー満ち溢れる感覚が好きである。
今回はどんな出会いやアクシデントがあるのか楽しみにしつつ、フライトの時間を楽しんでいた。ANAの機内は、日本の航空会社だけあって気配りが域届いたおもてなしをされた。機内設備も充実しており、DVDも最新の映像が用意されていた。DVDに見入っていると途中、泣きそうになってしまった。あまりにも感情移入しすぎたようだった。
途中、ベトナムの入国手続きの書類が配られ、僕はいつものように記入し始めた。隣の席の大学生は、なんだかあたふたしている様子だった。
そこで、僕は「どうかされましたか」って尋ねた。
その大学生は、「僕は、海外旅行が初めてなんです。この用紙をどう記載していいかわからないのと、ペンを持っていないんですよ。ペンを貸してもらえますか。」
僕「いいですよ。入国書類の書き方はわかりますか。もしよければ、書類の書き方を教えましょうか。」
大学生「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
僕「パスポートと帰国便のフライトナンバーはわかりますか?」
大学生「俺のパスポートとeチケットの両方でいいですか。」
と大学生は、パスポートと帰国便のフライトチケットを用意しはじめた。
これをきっかけに、僕とその大学生の世間話の会話が始まった。
大学生「俺、山田って言います。都内の大学に通う3年生で、専攻は東南アジア観光、東南アジア観光学科に在籍しているんですよ。」
僕「初めて海外旅行で、どうしてハノイにしたんですか」と訊ねてみた。
一般的には、はじめての海外一人旅だったらハワイとかグアム、オーストラリアあたりからはじめるのでは、と思っていたからだ。まぁ、そういう僕も初めての渡航先は、インドネシア共和国で、日本の大学の姉妹校で、インドネシアの大学へ短期留学のために渡航したのが、はじめてだったなぁっと思いだした。
山田「俺、行き先はどこでもよかったんですが、予算と時間。それと前々から東南アジアに興味があって。バックパッカーならば、タイのバンコクから旅は始まるんでしょうけどね。なぜか、俺はベトナムのハノイが気になったんですよ。」と答えた。
僕は、彼となんだか話が合いそうなインスピレーションを感じた。
というより初めは、彼が僕の席の隣に着いたときに、雰囲気のある子だなぁったと感じられた。格好は今時の若者なんだけど、その人その人がもつ空気感が、僕のインスピレーションに近さを感じた。
僕のそういった動物的感って結構当たるって、友達の間でも有名なんですけどね。
僕と山田がそんな世間話をしているうちに、いよいよ着陸態勢へのアライバルアナウンスが流れ始めた。僕は、一人旅ならではのこんな出会いもなかなかいいもんだなぁって思いつつハノイ ノイバイ国際空港へと着陸となった。
機内の乗客は、飛行機、ハノイのノイバイ国際空港に着陸し、入国審査ゲートへ移動するため、皆、座席を立ち始めた。
僕に、山田は「また、お会いしましょう。」と言った。
僕は、不思議とその時、またどこかで再会する予感がした。
僕は「GOOD LUCK」と彼に告げた。
山田も僕へ笑顔で会釈をして、僕より先に席を立って出口へと向かっていった。
彼の初めての海外旅行でどんな体験をし、何を感じ取って帰国するのだろうかと、彼の後姿を見送りつつ僕は思った。なんだか弟を先陣へ見送り様な気持ちになった。
旅の出会いは、一期一会と思いつつ、この四字熟語は本当に意味深いものだと思った。昔の人は本当に情緒のあるフレーズを作ったものだと感心した。
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