先立つ輩に口はなし

先輩の声が聞こえる。


「例えば猫がゴキブリを捕まえようとしているところを見たとして、それでも猫を可愛いと思うのならあなたは『猫』が好きで、それで猫に幻滅するならあなたは『猫の可愛いところ』が好きなだけなのよね、結局」


先輩の声が聞こえる。


「人間が嫌いだって時折人間さんは言うけれど、それって嫌いなのは人間じゃなくて人生でしょう?あなたもそうは思わない?」


先輩の声が聞こえる。


「星も覚めるような晴れ間でも『お星さまが見守ってる』ってどうして思えるのかしら、夜にしかあの子達はいないじゃないの」


先輩の声が聞こえる。


「死ぬときには目を閉じてたいって思わない?だって、そうだったらまるで寝ただけで、また起きれると思えるじゃない?明日にでも起きて遊びましょうよ。暇があれば」


先輩の声が聞こえる。


「心ってひとつの信仰よね、脳の信仰。そう考えたら誰しも狂信者よ。最低ね」





「ぼくは猫より犬派です」

ぼくはそう言う。


「しょうみどっちも嫌いなんじゃないですか、そういう人は」

ぼくはそう言う。


「むしろ四六時中見られたら気持ち悪いですよ」

ぼくはそう言う。


「暇を『ひま』って読むか『いとま』って読むかで意味変わってきますね、それ」

ぼくはそう言う。


「ぼくもそう思います」

あなたを好きだった、ぼくはそう言った。

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