現代人、『彼』に拾われる14~19日目

完璧過ぎる大魔導師オーバーパーフェクトオーバーウィザードとローレンス】

「なあ、完璧過ぎる大魔導師オーバーパーフェクトオーバーウィザードのロリ……なんとかパソビエってローレンスの兄弟かなにかか?」


 夕飯の最中、俺がそう言うと、飲み違えたのかローレンスはむせた。


「ど、どこでそれ知ったの?」


「え? 完璧過ぎる大魔導師の娘って呼ばれた子がいたから、どうしたらオーバーなんちゃら……さんのことが知れるか、マギヤ……さんに聞いたら図書室に歴代魔導師ウィザード取得者が見れる資料があるって言われてさ。で、ちょっと読んでみたら、そのオーバーなんちゃらさんの顔がローレンスに似てたし、名字も一緒だったから、それで……」



【見てしまった】

 二十日から二十一日に日付が変わっていく夜、俺がトイレから部屋に戻る途中、少し先に人が現れた。


 見ると、ローレンスが女の子を横抱きにして、部屋に入ろうとしていた――あれ、あの女の子確か、昼間誕生日って話題になってた――。


 あの女の子が誰か思い出そうとしていたら、いつの間にか手ぶらになったローレンスが、ねえ見た? と至近距離で声をかけてきた。俺は、え、いや、みたいな声しか出なかったが、ローレンスは無感情な目でこう言った。

「……キミに見せるつもりは、無かったんだけどね……、まあでも、部屋に出向く手間が省けてそこは感謝しておくよ」


 ますます混乱する俺をスルーしてローレンスは話を続ける。

「あ、安心して? キミを殺すとか物騒な真似はしないから。ただ、ボクとのあれこれが思い出せなくなるだけ。ボクにとってのキミは物騒なことをする理由も価値もない、せいぜい知人止まりの存在だから――じゃあ、さようなら、たけしくん」



【俺は××××のたけし】

 目を覚ますと、俺はベッドの上で寝ていた。横を向くとはしごが見えるから普通のベッドじゃなく、二段ベッド。


 ベッドから降りて先に起きていたあいつが俺に朝の挨拶をする。


 一瞬、こいつ誰だっけと思ったが、すぐに寮のルームメイトだと思い出した。


 俺がこことは違う世界の人間で、そこでロ、ロ……名前の頭文字しか思い出せない誰かに拾われて暮らして……なんていうか、長い夢だったな。

 ま、俺はだし、所詮夢だしな。

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