第4話二日目

薄く目を開ける。

頬をサラサラと風がなでていき、日に当たっていた左手だけが少し熱を持っていた。

いつもと同じ朝、に、少しだけ違うところがある。隣に人がいるのだ。次の日などに死ぬ人と寝ることはよくあるが、よく素性もよく知らないこんな他人の横でぐっすりと眠れたなと、少し自分の危機感に少し驚きながらも、彼が起きないようにそっと布団から出る。


昨日の夜、彼を家に招いたあと、私も疲れていたのですぐ寝ることにした。

布団は一つしか出せるものがなかったので

彼に使えといったが、自分はいい、と聞かなかったので私が布団でねた。

今からもともと家にあった布団を洗濯して、

料理を作って、掃除をして、、

そんなことを考えていると、いつも自分が

普通の人になったような気分になる。

そして、もし自分がこんなことをしていなかったら、こんな境遇じゃなかったら、なんて、無意味なことを考えてしまうのだ。でも、今日はなんだか少し違う気がする。自分では思わないだけで、やはり人がいることでそちらに意識が向いて 考えに耽ることも少なくなるものなのだろうか。それに、彼が

そこにいるだけで、なんだか時間がゆったりと、なだらかに流れていくように感じた。

まあ、そんなはずはないのだけれど。

時間はいつも同じ速さだ。自分のよくわからない考えに呆れる。


そんなこんなで洗濯が終わったとき、彼が起きてきた。おはようとかなんとか、眠そうに話しながらうろうろしている。何もすることが見つからないであろう彼に遅めの朝食を出してから、私は一息つく。こんななんでもない生活のひと場面を切り取れば、きっとこれが普通、なのだろう。


その後も特にすることなく、何気ない一日を過ごした。こんな日々もあと少し。私はいなくなるのだ。ふとした瞬間にそれを意識するときがある。思春期にあるような、自分とは遠くにある、柔らかで暖かく、棘を持った死への希望と渇望。私はきっと幼いのだ。

遠くに見えるあの黒い海は、日の光を反射して恐ろしさを少しだけ隠し、揺らめいていた。

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白と海 すい @suiyomu27

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