第3話 宇宙の父のキレどころ。

宇宙の父はキレやすい星人である。


大体の人はキレどころというところがわかるが、宇宙の父はキレどころが全くわからないのである。


ある日の出来事。


私たちが2階にいると突然、宇宙の父が怒鳴りとばしてドンドンドンと2階へ上がってきた。


そして、


「俺のナフタリンをどこへやったー!」


鬼の形相でキレまくっていたのである。


ナフタリン?防虫剤?なんで怒るの?


ナフタリンがないだけでなんでそんなにキレるの?


防虫剤でそこまでキレる?普通。。。


訳がわからない。


そんなにナフタリンが大好きなの?


そんなにないと困るの?


謎である。


ナフタリンぐらい3つまとめて買ってきてあげるよ。


それだけの事でなぜ怒るのか?と家族はみんな思っただろう。


それを証拠に、こっそりみんなの顔を横目で見たら、全員ぽかーんと口を開けていた。


これぞ未知との遭遇。


父はどうしようもない星の人である。


宇宙の父は親に逆らうことを絶対に許さない星人でもあった。


少しでも生意気な言葉を言うとキレまくっていた。


僕はできるだけ避けていて、あまり会話はしないようにしていた。


敬語までは使わなかったが、言葉には気をつけていた。


僕の母は気が強い人でよく宇宙の父と戦っていた。


つかみ合いの取っ組み合いになっていることもしばしば多かった。


まるでスターウォーズだ。


私が子供の頃、戦慄なバトルがあった。


父と母は取っ組み合いの喧嘩をして、お互い殴り合ってるというか、父が一方的に殴っていたのかもしれない。


母は言葉だけで返していたのかもしれない。


そして、私の目の前で2人が取っ組み合いを始め、父はライトセーバーの代わりに電気スタンドを持ち出し、母は固定電話の受話器。


そしてその電気スタンドの裏で母の頭を殴ったのである!


母の頭から血が吹き出した。


僕の目の前で、母の後頭部から血が出る瞬間を見たのは小さいながら衝撃的だった。


目がまん丸になるというのは、こんな時だろう。


人の頭からピューと血が出る瞬間を目の当たりにしたのだから衝撃的事件であった。


そこから血を見た父の態度が急変し、


「お母さん大丈夫か?」


鬼の形相から借りてきた猫みたいに態度が180度変わったのである。


我に返ったのか。。。


「一緒に病院に行こう。大丈夫か?大丈夫か?」


何と言う態度の変わりように僕は全く理解ができなかった。


そんなに態度が変わるなら初めからやるなの一言である。


宇宙の父は家族だけではなく、他人にもよく怒鳴っていた。


しかし、喧嘩になりそうになるとなぜか他人の場合は逃げ腰になるのである。


そのような場面を何度か見てきた。


たまには他人と取っ組み合いの喧嘩をしたりもしていたが、他人が


「悪かった、お互いやめましょう」


と謝ったとしても絶対に許さず、逆にさらにキレ始めるのである。


つまり、相手が弱気になるとつきあがるので、なんとまぁ性格がいいのか、悪いのか、全くわからない星人である。


恐ろしや~、恐ろしや~。


全く情けない星人である。


私は同じ星人になりたくない。


気が強い星人なのか、はたまた気が弱い星人なのか、全く謎の宇宙の父である。


たぶん、無茶苦茶星人なのだと思う。


僕は見ていて恥ずかしい気分になった。


そんな宇宙の父にはやっぱり似たくないのである。


子供の時からこの父には似たくないのである。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る