第2話 宇宙の父はヤクルトが必要。
宇宙の父は偏屈で夕食時、テレビを見て気に入らないと、
「あんな物出しておかしいじゃないか!」
などとクレームの電話をテレビ局にする程、大抵のものに対してケチをつける。
そんな父にも弱いものがある。
それは孫。
孫に会うと苦虫を噛み潰したような顔から仏のような柔らかい笑顔になるのである。
これは意外であった!
僕の幼少時代はあまり宇宙の父に対して良い思い出がなかった。
理不尽に叱られてり、謎な躾をされていたので、宇宙の父は子供が嫌いだと僕は思っていた。
妹の子供は5歳になるかわいい男の子である。
よく宇宙の父の家に遊びに行くらしいのだが、孫は孫なりに宇宙の父のことをよくわかっている。
孫ひとりで宇宙の父家に泊まりに行く事さえできる。
僕から見たら、信じられない。
5歳児と宇宙人。
一体何を話しているのかとても謎である。
大人になった僕はあの宇宙の父の家に泊まるなんてとても、とてもできない。
やっぱり子供は感受性が強いのか、宇宙の父のことを多分子供なりに理解していると思う。
それとも同じ惑星の人種なのか?
孫はスイミングスクールに通っているのだが、宇宙の父は雨の日なんかは気分がいいと送り迎えをしている。
その車の中での出来事である。
車を走らせるとお巡りさんを見るたびに
「チッ!このくそポリ公めが!」
とつぶやいたり、あのいつもの奇声、
「うわーうあわーうああわー」
と大声を発してしまうのである。
小さな孫が乗っているのにもかかわらず、奇声を止められないのである。
しかし、宇宙の父もさすがに
「あ、ヤバイ、ヤバイ、言ってしまった!」
と慌てて口を塞いでいるらしい。
わかっているじゃないか!自分の奇妙奇天烈な行動を!
孫は保育園で、ヤクルトが体に良いと言う話を友達から聞いていたものだから
「じいじはね、頭がおかしいからね。ヤクルトたくさん飲んだ方がいいよ。」
と言う、何の根拠もない無邪気なアドバイスを宇宙の父にしていた。
素晴らしい!
効能こそ違えど、子ども心にじいじを救いたいと思ったに違いない。
優しい子である。
ヤクルトを飲んだ方良い!僕もそう思う。
全く孫の言う通りである!
宇宙の父の事を手にとるようにわかっている孫である。
そんな宇宙の父ではあるが、孫にはよくおもちゃやお菓子などを買ってやる愛のある部分も見え隠れする。
昔から宇宙の父は人類稀に見る大のケチであるにもかかわらず、孫には弱いのである。
宇宙の父は、アメとムチが混合している星人なのである。
これが意味がわからなく、僕を迷わせる原因でもある。
愛のある星人なのか?
はたまた、冷たい星人なのか?
宇宙の法則を使っても、何を考えているのやら全く理解できない。
どこで入手したのか、孫は宇宙の父の取扱説明書を持っている。
「あーあ、じいじと一緒にデパートにいけたらいのになぁ~」
「あーじいじがずっと元気でいてくれたらなぁ~」
と、現金なやり方で宇宙の父の心をくすぐるのである。
私にはできなかった。と言うより同じ地球人として理解できなかった。
やっぱり彼らは同じ惑星の人種だ。
孫の言う通り父はヤクルトを飲んだ方が良い。
きっと良くなる。
同じ惑星の人が言うのだから。。。
私には解読不能だった取扱説明書。
今も何が何だかわからない。
そしてこの先ずっとわかる事はないだろう。
孫は宇宙の父を手のひらで転がしている。
どんどん転がしてほしいところである。
僕は、自分の孫に頭がおかしいからヤクルトを飲めとは言われたくない。。。
やっぱり、父には似たくない。
僕は父とは違う惑星の人だと思いたい。。。
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