4 3つの持続可能性

図:https://19084.mitemin.net/i336075/


4つの政策分類に従って、持続可能性という政策課題を分類すると、

次の3つに分けることができます。


主に技術的政策の課題である、①物的資源の持続可能性、

経済・社会政策の課題である、②経済・社会活動の持続可能性、

人的資源(教育・保健)政策の課題である、③人的資源の持続可能性です。


行政管理政策の課題については、

後述のように制度・政策の持続可能性を加える分類法もありますが、

制度・政策も広い意味では経済・社会活動に含まれるので、

ここではまず、前三者のいずれかに含められると考えて説明します。


第一の、物的資源の持続可能性についていえば、

技術的政策なら、科学・技術の持続可能性でも良さそうです。

しかしそれでは抽象的だし、科学・技術自体が問題のようにも見えうるので、

技術利用の必要条件である物的資源の、持続可能性としました。


ここでいう物的資源には材料・エネルギー資源だけでなく、

より基本的な食糧・水資源や、そこからの製造物・建築物も入ります。

そのため課題としては、資源・環境問題に加え、

社会基盤インフラの老朽化なども含むことになります。


第二の、経済・社会活動の持続可能性とは、

実際にはその中における、富(財、資源)の再投資(経済発展)と、

再分配(生活安定)の両立という、内部条件の問題です。

例えていえば、翌年の種籾たねもみと皆の食料のバランスです。

この条件は文明要素という形では表れていないため、

そのまま経済・社会活動の持続可能性と表現しました。


第三の、人的資源の持続可能性については、

肉体的・精神的だけでなく社会的な健康も含む、健康水準の経年・経代的低下と、

社会活動の複雑加速化に対応した教育水準の相対的低下、という問題があります。


まず、高齢者や私のような虚弱者の増加は、以前から予測されていました。

そしてこれまで私達は人的資源について、意識的にせよ無意識的にせよ、

災害、疫病、貧困、戦争や犯罪による淘汰を受け入れて来ざるを得ませんでした。

しかし今後、そのようなあり方はますます許されなくなってゆくでしょう。


そのことは、SDGsの『誰一人取り残さない』という基本理念や、

国際政策における『人間の安全保障』という理念に表れています。


向上心であれ欲望であれ、良くも悪くも人間の欲求には限りがありません。

より少ない犠牲や損失ロス費用コスト危険リスク

より多くの福祉や利益を得たいというのは、

原罪あるいはごうとも呼びうる、人間のさがなのではないでしょうか。


安く、元から治せる医療技術や、人の能力を補う知能ロボットなど、

新技術により高齢化等による社会負担を低減し、

人道的な手段によって、問題の解決を図っていくしかないと思います。

これは、女性の教育により人口爆発からくる戦争や貧困を防ぐなど、

他の人的資源政策とも相通あいつうじる発想だと思います。


健康の問題には、社会的健康の低下も含まれます。

技術革新や歳月の経過に伴い、仕事が減っていく中で格差が開き、

上位階層の少産や世襲化、下位階層の多産もあって、

能力の開発や適性の活用が困難になっていく傾向もあるようです。


そうなると、上位階層は過剰な権限や責任のために腐敗や失政、

下位階層は能力を適切に活かせず衆愚化や反社会化の恐れが増え、

中間層はその両方、特に没落で後者の恐れが増すといった、

社会的な健康水準の低下が懸念けねんされます。


社会階層に限らず、様々な業界、地域、党派や宗派による社会集団の分断や、

産業変化への適応不全、利己主義化 ( タコツボ化あるいはサイロ化 )により、

要らない仕事を作って行うマッチポンプや、

仕事のための力を悪用してしまうミイラ取りのミイラ化も案じられます。


現在、階層や業種を問わず見られる様々な組織的不祥事スキャンダルの背景には、

そうした事情もあるのではないでしょうか。

組織の垣根かきねを越えて話し合い、今後新しく必要になる仕事を一緒に考えて、

適切に分担していく政策が待たれます。


さらに、もし社会の変化に教育が追いつけなかった場合、

実質的にはその水準が低下してしまうのではないか、ということも心配されます。

経済・社会活動の拡大・変動や複雑加速化に対応できるような能力を育む、

社会的な多様性ダイバーシティー包摂インクルージョンも含めた、

新しい教育・啓発の技術や政策も求められます。


最近、『JOKER』という映画が大ヒットしましたが、

この映画は以上のような人的資源の持続可能性についての論点を全て描いており、

その人気の背景にも、同様の社会的な問題意識があったのではないかと思います。


各種の政策は連携して実施されるべきものですが、

歴史的にみると灌漑事業や軍事支配による統治から

産業立国・福祉国家というように、政策の重心は移行シフトしてきました。


これまで重要であった富の生産(確保も含む)のための技術的政策や、

富の分配(再投資も含む)のための経済・社会政策に続き、

今後は富を作って分ける人間自身の淘汰なき向上のための、

人的資源政策も重要になっていくのではないかと考えます。

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