間章 Ⅰ 勇者パーティ、故郷に来る

勇者が来るも、彼の者は居ず

王国の近くにある辺境の村、

この村はジークヴェルトやアンナ達が生まれた故郷である。


「王都から馬車が来たぞ―!」

見張りの声が響くと同時に、村人が入り口へと殺到した。

煌びやかな馬車が、ガタガタと悪路を進んでくる。

やがてその馬車は門の付近に止まると、馬車から1人の男と5人の少女が降りて来て、


「ここが君達2人が生まれた故郷かい?」

白銀の鎧を着込んだ、黒髪黒眼の優男が隣に居る仲間の少女に尋ねる。

名は田中健太といい、宮廷魔導師により異世界から召喚されら勇者であり、

ジークヴェルトの婚約者であったアンナと義妹のメリルを寝取った外道である。


「ええ。そうよ、ケンタ」

真紅のドレスアーマーを着込み、黒いショートブーツを履いた、

金髪のショートヘアでエメラルド色の瞳をした少女が勇者にそう答える。

彼女はジークヴェルトの幼馴染であり、元婚約者の剣姫アンナである。

現在は髪はロングからショートに短くしている。


「ふーん、何もない所と聞いてどんなものかと思ったけど。割と普通ね」

露出の多い魔女服を着込み、黒いハイヒールを履いた、宝玉が填め込まれた宝杖を持つ、青髪のロングヘアでコバルトブルーの瞳をした少女が村を見て、思った事を言う。

彼女はルルカ・ルーヴェルトといい、魔法使いの上位職である"賢者"である。


「でも、私やアンナ姉さんからすれば思い入れがありますよ、ルルカさん」

修道服を着込み、サイハイソックスとショートブーツを履いた、

首にロザリオを掛けた茶髪のセミロングでブラウンの瞳をした少女がルルカに思い入れがあると話す。

彼女はジークヴェルトの義妹である聖女メリルである。


「ここにはアンナの元カレでメリルのお兄ちゃんが居るんだよね?」

フード付きのグレーのマントを羽織り、ノースリーブの緑衣を着込み、ブラウンのショートパンツとサイハイブーツを履いた、弓矢を持った白緑色のポニーテールのエルフの少女がアンナとメリルに尋ねる。

彼女はユリアといい、エルフの国から選ばれた弓士の上位職"弓聖"である。


「そう言う事は言ってならないですよ、ユリア殿」

青いドレスアーマーを着込み、黒いグレーヴを履いた、

腰に騎士剣を持つ、オレンジ色のセミロングでブラウンの瞳をした少女がユリアを咎める。

彼女はシャルロット・ミスラといい、王宮騎士団に所属していたが、勇者に気に入られ勇者パーティに入るが、最近はい入ったばかり、勇者の虜になっていない。


6人は村の門を潜ると、

「これはこれは勇者様、この何もない辺境の村へようこそ」

勇者達の元に来て、挨拶した老人はこの村の村長である。

「村長さん、ジーク居る?」

「ジークくんは先日エレンちゃんと一緒に帝国に向かったぞ、アンナ」

アンナが村長に聞くと、村長の代わりに強面の男性が答える。

「え、ジークがエレンと一緒に帝国に行ったってどういう事、お父さん」

アンナがお父さんと呼んだ、金髪のショートへアで碧い眼をした、

少し強面の男はアンナの父親で、名をアーノルド・ヴェルニカといい、

ジークヴェルトの父ギルヴァードとは親友である。

「如何もこうもない。アンナ、お前が勇者と結婚するとい手紙を送って、

ジークくんがどれ程、落ち込んだと思っている」

アーノルドがじージークヴェルトが落ち込んでいた事をアンナに言うが、

「仕方ないじゃない、ケンタを好きになっちゃったんだから」

「アンナ、あなた今自分が何言ってるのか分かってるの!」

アンナが仕方ないと告げたると、大声を上げ非難した金髪のセミロングで青い眼をした女性はアンナの母親で、名をエミリア・ヴェルニカといい、

ジークヴェルトの母ドロシーとは昔同じパーティを組んでいた仲である。

「母さん、落ち着いて」

「これが落ち着ていられ訳ないじゃない、あなた!」

アーノルドがエミリアと落ち着かせるが、エミリアはまだ怒っているが、

「いいから。アンナ、正直言って私はガッカリだよ、自分の娘がこんなにも愚かだった何て、ジークくんとの仲を戻すまで、帰って来るな」

「如何してよ!」

「如何してだと?そんなの決まってる、死んだギルの奴に面目無いからだよ。

だって、そうだろ?親友の娘が自分の息子を裏切ってんだ」

アーノルドがアンナにジークヴェルトと仲直りするまで帰って来るなと言い、

アンナが反論するが、アーノルドは親友に合わす顔がないと言う。

「そ、そんな事言わなくても良いじゃないですか」

「メリルちゃん。君も君だ、ギルやドロシーが死んでから今まで世話してきたのは一体誰だ?他でもないで、ジークくんだ。そのジークくんを裏切る何てギルやドロシーが泣くぞ?」

「う、それはそうですけど」

メリルがアーノルドを非難するが、アーノルドはメリルにもジークヴェルトへの恩が無いのかと言うと、メリルが狼狽しながら、そう答えた。


「お前等、王都に帰るぞ」

勇者は詰まらなそうに5人にそう言って、村の門を潜り、馬車に乗り込み、

5人もその後を追い、門を潜り、馬車に乗り込む。

そして、御者が手綱を引き、馬車が悪路をガタガタと進んで行き、王都へと戻っていった。


「あなた」

「ああ、あんな事言って仕舞ったが、本当は笑顔でお帰りと言った方が良いんだろがな」

それを見届けたエミリアはアーノルドを呼び、アーノルドはエミリアが何を言いたいのか分かると、少し後悔しながも答えたのだった。

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