第38話 二つの動き
「――とにかく、ミハイルを助けよう。 ここはもう俺達がいなくても大丈夫だろう」
永遠とも思われる夜が明けた。
グェンが、抱え込んでいた頭から色々な思いをうち払い、言う。
「そうね、ミハイル達を助けましょう。 ……ミハイルは、この事を知ったらどんな顔をするかしら……」
アイリーンは白衣を脱いで、ギュッと眉根を寄せながら、旅行鞄に詰めだした。
「……オレ達が今まで仲間だって信じていたアイツは、本当は何だったんだろうな」
クリフは悪い夢をまだ見ているように言う。それでも、彼も帰還のために荷物をまとめようと動き出した。
「何で……どうして……!」ケイはまだ泣きじゃくっている。
アイリーンがそっと抱きしめて、
「日本に戻りましょう、これ以上……ミハイルやお冬夫人まで失う訳には行かないのよ」
「これは何だ、子供の落書きか? ……今どきに原爆の設計図? 貴様らは本当にナチス・ドイツが誇る科学機関『アーネンエルベ』なのか?」
Uボートに乗せられて大西洋を渡り、独逸第三帝国に来た季太郎は、まずアーネンエルベの面々に紹介されたが、その紹介の場で彼らを面罵した。
「ペンを貸せ。 僕が本当に『実用的』な兵器の設計図を書いてやる」
彼は一時間も待たせぬ間に大陸弾道ミサイルの完璧な設計図を紙上に書き上げた。アーネンエルベの面々が絶句する。これはもう彼個人の科学力と言った次元では無い、さながら、これらの兵器が実装されている世界から彼が訪れたかのような――。
「『
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