第10話 コレクターの偏愛 下
季太郎が歩けるようになってから、ミハイルは彼を屋敷の地下室に案内した。
地下への隠し階段を降りた先、分厚い扉があった。
「開けるぞ」とだけ言って、ミハイルが手を扉にかざすと、
『マスターノ指紋ヲ認証シマシタ。 扉ノロックヲ解除シマス』
人工音声が流れて、扉が開いた。
――そこは、白衣を着た人間が数名と、地下に広がる立派な科学研究施設があった。
「ここにいるのは全員とっておきの変人奇人さ」ミハイルは白衣に着替えつつ説明する。「生まれた国も信念も得意不得意も何もかも違うが、全員俺が気に入ったヤツばかりだ」
「あら! キタローじゃない」と見事な金髪をひっつめた若い欧米の女が出てきて、「ここに来た、ってことは、ナノマシンを作るつもりなのね。 でも……恐らくケイには間に合わないわ」
「……」季太郎は黙って研究施設を見渡していたが、「宮様。 ここの設備でしたら、三日……およそ七十二時間で充分であります」
「え」女が目を丸くしている側を通り過ぎて季太郎は無限発電炉の側へ寄った。そこには、世界最新型のコンピューターがあった。
「これの改造から始めます。 これでは処理速度が遅すぎますので。 ナノマシンの量産を可能にするプログラムを放り込んでも平気なようにバージョンを進化させます。 ナノマシン増産機も平行して開発します」
「……おい、テメエ何を言っているんだ?」片足が義足の、傷痍軍人と思しき大柄の黒人が、季太郎の襟首を掴み、「寝言は寝て言え!」
「僕の邪魔をするな」だが季太郎はそれを振り払い、血走った目で黒人を見据えた。「僕がやらねばならぬのだ!」
「やらせてみろ」とミハイルが面白そうに言った。戸惑っていた者達が困った顔をする。「ソイツは本気だ。 そして本当にする」
「感謝申し上げます、宮様」そして季太郎は猛然とコンピューターをいじり始めた。
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