第34話自分から望んで巻き込まれに行くpart5

 ルークはリンにキスをもう一度した後、名残惜しそうに地面に下ろこそしたが、抱き締めたまま中々離そうとしなかった。

 あろうことか、顔中にキスの嵐迄落として来るのだから困ったものだ。

 後日、リンがルークから聞いた話では魔法を使った後はある種の興奮状態となり性欲というよりはありとあらゆる欲が増すのだそうだ。

 その中でも高まるのが性欲と戦闘欲で、性欲に変換できなければ、それはそのまま戦闘欲に繋がり、相手を完膚なき迄叩き潰さずには要られなくなる。

 普段はそれでも耐えられるのだが、そこに好きな女がいたものだから抑えが中々効かなかったらしい。

 傍迷惑な話である。


「ルー様、いい加減にして下さいよ」


 元々順応性には好評のあったリンはこの状況にも早々と慣れ、半場呆れ気味に呟いた。


「………やだ……」


「いや……嫌だじゃなくて、まだ何も片付いてませんよね!?」


 そう言うとルークは渋々リンから離れて敵の皆さんにある命令を出した。


「お前達は俺に深手を負わせるも仕留める迄はいかなかった。……そうあの女に伝えて、今後の動向を探れ。何か分かり次第サトリ経由で伝えてこい」


 その言葉に反応したのはリンだ。

 男達はと言うとルークの言葉を聞き終えると姿を消してしまった。

 何故サトリを知っているのか?何て裏に生きる人間には無意味だ。

 何故なら情報を探るのも彼らの仕事だから。リンの過ごした村でも情報は良く売れたから、情報はそれは調べ上げる専門職があった。だから不思議じゃない。

 ルークに関するものは勿論調あげているだろう。

 ルークもそれをよく解った上で話をしていた。流して良い情報はそのままに、隠したいものは隠しきれているか?

 調べあげられているとしたら、あの女の配下のレベルが高いと言わざる終えない。

 なら今後の対応を考えなければいけない。

 あの女は、ルークの命を狙っているのだから……。


 リンが骨折させた男も仲間に連れられ消えていったのを見送ったリンは少しホッとした。

 何せ盛大にへし折ってやったから、きっと自分では動くことは出来ないだろ。


「サトリ君は辺境警備についてますよね!?呼び戻すんですか?」


 手練れなのはより解ったから、一度手合わせを願いたい。


「………嬉しそうだねリン。……呼び戻すの止めようかな」


 ジトっと恨めしそうな眼を向けてくるルークに、元々男女の嫉妬等とは無縁で、そんな物は物語の世界だけの話だろう、何てトキメキとは違う世界に生きてきたリンは、ちょっと面倒だなと思ってしまう。


「何子供みたいな事を言ってるんですか」


 はあ、とつい溜め息が出てしまった。


「確かに優秀な男だけど…リンはサトリが好きなの?」


「サトリ君は好きですよ、優しいですし。……でもアンさんも公爵家の皆も同じくらい大好きです。……おかしいですか?」


「………俺は?…」


 面倒臭い!!

 けど、不覚にもちょっとの子供みたいで可愛いと思ってしまった。


「………好きですよ…」


「………サトリより?」


 この男は!!

 初心者マーク全開のリンには難関なのを引き当ててしまった様だ。

 初心者仕様にしてくれる気もどうやらないらしい。いきなり上級者編の上、プロレベルでは流石のリンもどうして良いか解らなくなる。


「好きのベクトルが違いますから比べられません」


「………成る程ね……なら俺はどの分類に属しているの?」


「……………………男の人」


 ぼそぼそとした声になって、最後は尻窄みしてしまうのはしょうがない筈だ。


「じゃあ、サトリやアンは?」


「仲間です」


「大体解った……うん、ちゃんとリンの中で男として意識してくれてる様だね。……成る程?…リンは俺の事を一人の男として好きだと」


「くっ!!……知りません!!……面倒くさいルー様何て嫌いです!!」


 背の高いルークの顔を真っ赤な顔したリンが見上げながら睨み付ける。

 恥じらいかたが何ともリンらしい。

 俯くのでは無くて見上げるのだから。


「ごめんね?…後で美味しいお菓子を上げるから許してくれる?」


 お菓子で釣られると思われている何て!!と思うけれど、それを言ってくるルー様が可愛いからのって上げる。

 リンは徐々に女としての感情が育ち始めていた。いや……ルークによって無理矢理育てれていう方が正しいか?


「………1つじゃ許しませんよ?…」


 笑いながら『解ったよ、王都で有名なお菓子をたくさん用意するね!』と言った。

 でも、私は公爵家料理長のダンスさんが作るお菓子が好きなので、そう伝えた。


 何て、私とルー様は傍から見たらバカップルみたいなやり取りを一度中断させ公爵家に帰る事にした。


「さて、もう直ぐそこ迄は来ているとは言え、馬も帰してしまったしねえ」


『どうやって帰ろうか?』等と言っている割にはルー様は全然焦ってはいないんだからと半場呆れてしまう。

 だが、だからこそこんな提案をしようと思うのだ。


「………この距離なら何とかなりますが……ルー様さえ嫌じゃなければ、ですけど」


 ◇◇◇


「あははははははははははははは!!」

「ルー様黙ってないと舌噛みますよ!?」


 大爆笑のルー様。

 リンはと言うとルークを俵抱きにして木々を飛び移りながら高速移動を繰り広げていた。

 初めは屈辱だと怒られると思っていたリンだが、思いの外ルー様が高い高いをしてもらって喜んでいる子供のようにはしゃぐので、気にせず抱き抱えて公爵家迄帰る事にしたのだ。

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