第32話自分から望んで巻き込まれに行くpart3
……何なんだ?
ルー様は何が言いたいんだ?
どうみてもお前ら、ついて来れるならついてこい!、みたいな事をしておいて何を行ってるんだ?
何の為に、恥ずかしい思いをしながら宿に泊まったと思っているんだ!?
逃げようと本気で思っているのなら違うルートでとっくに公爵領に到着している筈だ。それをしないのは、公爵領に奴らを侵入させる事なく片付けようとしていたいからじゃないのか?
「……ちょっと何を言ってるのか解んないです。……この行動が本気で逃げようとしての行動なら、頭ごなし大丈夫ですか?お花畑よりも酷いですよ!?」
「……リンはすっぱりと言葉で真っ二つにするね。……本当に俺が逃げようとしていての行動だったら、リンの言葉で即死だよ」
「失礼ですね…私だってルー様が本気なら言葉を選んで止めていますよ」
「……でも止めるんだね」
「何も考えていないでの行動なら止めますよね…怪我じゃすみませんし、守りきれませんし、意味ありませんし!」
この間も勿論歩き続けている。しかも歩くスピードをあげての会話なのだから、二人とも器用である。
リンは少しだけ驚いていた。リンは何時もよりスピードを抑えているとはいえ、ルー様は着いてくる事が出来るだけのスペックがあるのだがら。
でも、何故少しだけ驚いたのかは、元々ルー様には底知れない何かが有ると思っていたからだ。
自分とは違った力がある様な気がする。
ルー様の能力は心の中を見える眼だけでは無いような気がするのだ。
3年寝太郎でも穀潰しでも、名だけの公爵でも女垂らし(←酷い)……でも本当は無くて優しい、能力の高い人なのではないか?と思うのだ。理由が合ってそう見せているだけの様な気がしてならない。
……いや、女癖が悪いのは本当か?
でなければリンの胸を本人に断りもなく触ったり(←本当は寝ている間に揉んでいたが……)しないだろう。
そうリンは考えたが、その実、ルークはリン以外の胸は揉んだ事はない。まあ、肉食系女子の過激なボディタッチ攻撃により、触った事が無いとは言わないがルークの女嫌いは筋金入りだ。得るものが有るからルークは世間の噂を利用しているだけに過ぎない。
その整い過ぎた良すぎる容姿と血筋の為に、噂は噂ではなくて信憑性を増し増しにさも本当の事の様になっているのだが……。
ルー様からは何も聞かされていないので、あくまでもリンの勘でしかない。
思ったよりも早く比較的大きめな湖に到着した(リンとルークの足だから早く着いたのだが、実はリンは少しずつスピードを上げていた。……でもそれは意地悪では無くて、そうしなければ湖につく前に追い付かれてしまうから)
「着きましたよ、ルー様?」
「ああ……奴らもどうやら着いたみたいだね」
「で、どうします?」
略、同着、間一髪だった様だ。
二人は振り返らずに、湖を向いたまま話を続けた。夜が明けていないため、回りは月明かりしかない、その月明かりで水面が光っている様な幻想的な世界が広がっている。
「一気に方をつけたい。試してみたい事がある。だからちょっと魔法を使おうと思うんだ。……リンにお願いがあるんだけど、気絶させずに時間稼ぎをしてくれないか?」
実質は解らなくても、少なくとも10人以上20人未満はルークの見立てでもいるだろう。
それを抱き締めたら腰が折れそうな華奢な少女に頼む事じゃ無いのだが、そこはリンの力を信じるしかない。
「解りました。……何分位持たせれば良いですか?…片っ端から気絶させて良いのなら未だ楽ですが、そうじゃないとちょっと骨がおれます」
「5分……出来る?」
「気絶させるのはダメだけど、意識さえあれば身体の状態はどうでも良いんですよね?」
それはどうみても、身体的に動けなくすると言うことだろう。
ちょっとリンの過激で頼もしい発言にルークは苦笑した。
「……お手柔らかにね?(参ったな…離してやれないね)」
ルークの副音声はリンに届く事はない。
無いが……ルークが思っているよりも公私共にリンとルークは相性が良いのかも知れない。
「了解です。……では、役者が揃った様なので行きます。……逃がしてもダメなんですよね?」
「出来ればね…」
リンは肯定の意味の微笑みを浮かべると一気に敵に向かって加速した。
未だ手に持ったままのナイフの持ち方を変えると身を屈め一人目の両足の腱を迷う事なく切りつけた。
悲鳴を上げる暗殺者。
リンの能力はシリルの母親が送って寄越した暗殺者達を軽く凌駕していた。
「まずは一人…」
リンは背後をとると両手を折った。
その間もルークは魔法の詠唱を開始しする。 簡単な物なら必要ないが、大人数を対象にするとなるとそうも行かない。
ルークは詠唱が終わるとリンの名を呼ぶ。
それだけでリンには時間稼ぎが終了したのだと解った。側転を何度か繰り返しルークの側まで戻ってきた。
その瞬間、湖の水が水柱となり敵を一人一人拘束していく。
水が鏡になり、ルークのもう片方の瞳を水柱全体に写し出した。
それを見た敵全てが、動きを自ら止めた。足を折られ、腱を切られた者すらルークに近付き膝を着いた。
「え?…」
驚いたのはリンだ。
彼らの虚ろな瞳には何も写していないように見える。
「俺のもうひとつの眼はね。俺の眼を見た全ての生き物を従わせる事が出来るんだ。……気持ち悪いだろう?」
他の奴らはいい。
でもリンに嫌悪されたらきっと絶望する。
「ビックリはしましたけど、気持ち悪くは無いですね」
けろっとしているリンは、ただ驚いているだけだった。
ぶつぶつと、だからここまで来たのか、等と言っている始末。
「嫌にはならないかい?…俺は君の意思を奪う事が出来るんだよ?」
それでも確認してしまうのは惚れた弱味と言うものだろうか。
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