第16話薬草の作り方

 何れくらい下って来ただろうか?

 地下何mかは解らないが、日の光は完全に無いのに、水の流れる音だけはするのだからこの場所は不思議だ。

 ランプの光がなければ、完全に闇だけの漆黒の世界が長く続いている。

 やがて一つの扉の前まで辿り着くとルーク様は自身の手を扉の一部に翳した。

 取手は無い、はてどうやってこの扉を開けるのか?そもそもがこれは扉なのだろうか?等とリンが一人疑問を感じていたのだが…。

 すると手を起点として光の紋様のような物が扉一杯に広がり、カシャンと言う音と共に扉が開いた。


「凄い…」


 余りにも自分の常識以上の物を見聞きすると、人は単純な単語しか口に出来ないらしい。


「……面白い仕掛けだよね。未だ魔法使いが実存していた時の代物らしいけど詳しい事は俺にも解らないんだ」


 そう言ってルーク様は私を室内に入るように腰の辺りに手を回して促した。

 自分で思っているよりも、どうやら私の心は驚いていたらしい。

 促されなければ動けなかった事に初めて気付いた。

 こんなこと、多人数を相手にしている時だって無かったのに。


 ルーク様は私の後に部屋に入ると扉を閉めた。すると独りでにガシャンと言う音と共にどうやら鍵まで掛かってしまった様だ。


「それにしても……不思議ですね。この光はランプの光ですか?」


「ランプの光では無いみたいだけれど、正直俺もからくりは解らない」


 リンは物珍しさから周囲にある物を手当たり次第確認していく。

 だって、ここは部屋と呼ぶには大きすぎる。階段上の畑見たいな物まである、気になったってしょうがない。

 畑には用水路まで引かれている。

 そんな幻想的な畑に生るっている植物?の様な物の葉っぱは光っているしで、それが余計にこの部屋を明るくしているのだ。


「個の場所にリンと二人だけでいる何て……何か変な気分になってくるね……」


 それはリンに語りかけているのかそれとも自分の感情が口から漏れてしまっているのか、リンには解らないが、一つ解っている事はルーク様からは色気がだだ漏れに鳴って垂れ流れていると言う事だ。

 何だろうこの卑猥感は?

 精神衛生上宜しく無いので、色気をだだ漏れにするのは是非止めて頂きたい。


「……いいから仕事してください、急いでいるんでしょう?」


 リンはピシャリと言い放つとルークは渋々作業を始めたのだった。

 真面目に黙々と薬草と思われる光る葉っぱを一枚一枚丁寧に摘み取っていると、


「……やる気が出ない。……リン、仕事が終わったら俺にご褒美くれる?…そしたら俺も頑張れるからさ」


 まるで犬のような耳でもあって、それが下を向いてくうーんと今にも泣きそうな雰囲気を醸し出している。

 何だろう、まるで此方が悪いみたいじゃないか。リンは釈然としなかったが、嫌々頷いた。だって王子を助ける為の大切な作業なのに、やる気が出ない何て言うんだもの。

 この人のやる気は何処に有るのだろうか?いや、そもそもそんな機能は付いていないのか?

 リンが渋々頷いてからのルークの集中力は凄かった。まるでリンなど側には居ないかの様に全てを遮断して作業に没頭している。


 いつもそんな真面目な顔をしていれば良いのに。

 リンがそう思う程凛々しいルークの横顔、元々が類を見ない美形だから余計に魅力的に見える。

 摘み取った葉は未だに光を放っていた。


「……摘み取って尚光続ける何て…」


「光っているうちに薬に加工しなければ意味がないんだ」


 ボソッと独り言をまさか拾い上げて返して貰えるとは思っても見なかったリンは驚いた。

 あんなに集中していたのに。


「……だからこの場所じゃなきゃダメなんですね」


「そうだよ」


 ルーク様は手際よく大きな鉄製の鍋にこの場所の湧水を大量に入れて火にかけた。

 少しポコポコしていきた鍋に先程取った葉を大量に入れて更に煮詰めていく。

 煮詰めている間もルーク様は手を翳して呪文の様な物を呟き続けた。

 鍋の水は蒸発しながら光を放ち続けている。

 次第に葉っぱが水に溶け出しているのが解った……。

 其だけでも幻想的なのに、私は其よりもルーク様が気になって仕方がなかった。


 だって、凄い汗で、心なしか顔色も悪い。

 今にも倒れるんじゃ無いかって心配になってくる。


「ルーク様……汗を拭きましょうか?」


 居たたまれず、いけないと解っていながらも声をかけてしまった。


「……りん。お願いがあるんだけど」


「はい!何ですか!?」


 もう何でもする覚悟で聞き返す。

 団扇で仰げば良いのだろうか!?


「俺の背中に抱きついて……」

「はあ?!」


 仕方がない。

 これは仕方がないだろう、だっていきなり俺の背中に抱きついて、何て言われたんだから。


「……前も言ったけどリンが側にいてくれると身体が楽なんだ……」

「あ……」


 そう言われてルーク様を良く観察すると胸元から首に掛けて赤黒い紋様のような物が浮かび上がっている。

 ホントに冗談なのか、真面目な話なのか解り辛いったら……ホントに勘弁して欲しい。


 リンは、そっと汗ばんでいるルークの背中にギュッと抱きついた。


 密接しているせいでルーク様の体臭まで強く感じてしまう。

 男の人の癖に身体から薫る香りまで香水見たいでくらくらしてくる。

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