第7話これも私の仕事です………か?
今回の視察場所は、結構エグい場所だった。
本当なら辺境伯あたりが担当しそうなお土地なのに何故か公爵領とは、何故か!?と私は聞きたい。
そう、今回、隣の国との境界線となる渓谷も公爵領だから、国王の勅命で視察に来たのだ。まれに見ない重要任務だったりする。
なら何故に、シリウス様ではなく、お供が私なのか?……とルーク様に聞いたら、公爵家はシリウス様あって初めて回るから、だそうだ。だから、一緒に連れて来ることは出来なかったと、そこまでは解る。
解らないのは、何故に私か!?だ。
メビウス輪の様に同じ問い掛けをぐるぐるとしていたから、いい加減不毛でイライラしてくる。
「解せません」
本日何回目か解らない位言っている言葉をまた私は呟いた。
「本来、俺一人が来れば事足りる案件だからね……」
とは勿論、ルーク様の言葉だ。
出来男発言が何故か悔しい。
美形で観賞しているには良いけど、引きこも
り公爵だと、先輩達は言っていたもの。
「三年寝太郎の癖に……」
「はは、面白い事を言うね、リンは」
ルーク様がルーク様だからか、私の毒舌無礼も拍車がかかった。
いや、確実に私が悪いと解っているけど。
「……大丈夫、リンの事は俺が守るから」
いやいや、安心できません。
とても大変な旅路を終え、渓谷近くにある洋館に着いたのは昼過ぎの事だった。
公爵家より小ぶりだけれど、格式では負けていないんだろうな、と思える立派な屋敷の戸を叩くと、穏やかそうな老夫婦が出迎えてくれた。
「ルーク様、お待ちしておりました。…私の力不足で、お呼び立てしてしまい、申し訳ございません」
深々と頭を下げたのは、おじいちゃんだ。
いや、ルーク様が仕事をしてないから何でしょ?……口には出せないけど。
「……いや、俺の方こそお前にばかり負担をかけて、申し訳ない。……紹介するよ、このこはリン。…俺付きの執事見習いだ」
「……初めまして、リンです」
誰が専属だ、誰が。
でも優しそうな老夫婦に嫌われたく何て無いから、大人しくしておく。
「可愛らしいわね、女の子の様だわ」
奥様が、そんな嬉しい事をいってくれる。
だって本当に女の子だもの。
「お部屋の準備は整っております」
そう言って、お部屋までルーク様の荷物を運んでくれた。…本当なら私の仕事なのに、優しい方だ。
「待ってくれ、リンの部屋は俺と一緒でいい」
「はい!?…いや、別でしょ!?」
何を言ってくれているのだ、この男は!?
ほら、おじいさんも驚いているではないか!!
「何かと一緒の方が都合がいいんだ。…だから、わざわざ部屋を分ける必要はないよ」
そうルーク様に言われたら、おじいさんも何も言えないらしい。
◇◇◇
「ホント、信じらんない…」
この2階の一番大きく特別な部屋に、何故かルーク様と二人きりだ。
どんなにいい部屋でも嬉しくない。
「ほら、見てごらん?……リンが好きそうなベットだよ?」
「何で僕が好きそうだと思うんですか?!」
「だって、女の子って、こう言うの好きでしょ?」
ここは元々、別荘の様な役割を果たしており、今いる部屋も代々の公爵婦人の部屋だったらしく、ベットも天蓋が付いていて、お姫様のベット見たいで、正直結構好きだ。
「僕は今、男ですから」
「……へえ?……男同士なら、今日はリンに背中を洗ってもらおうかな?」
ルーク様は、黒い闇を背中に漂わせ、意地悪そうな顔をした。
「な?!…ひどい!……横暴なのはルーク様の方なのに!!」
「…リンが素直じゃ無いからでしょ?……好きなものは好き、嫌いな物は嫌いと言うところがリンの良いところなのに」
何だその言い分は?!
「……ベットは好きです。ルーク様と一緒は嫌です」
「公爵家と違って、ここは警備が万全じゃ無いんだ。…いい娘だから言う事を聞いて?」
えっ……理由はそれだったの?
だって、私……知らなかったから。
何時ものルーク様の我が儘だって思ってた。
いつも、軽い行動しかしてこなかったじゃない。
「……初めから、教えていただけたら我が儘は言いませんでした」
何て言い訳で、本当は自分で気付かなければいけなかった。
ホント、私は役にたたない。
「……私、ソファーで寝ます」
好都合にも、この部屋には、一人用だけではなく、3人座のソファーがある。
それだけで、私が暮らしていた家のベットよりは十分贅沢だ。
「駄目だよ?……リンはベット、俺のとなり」
「ソファーでも十分安眠できる大きさです」
「じゃあ、俺もソファーで寝るよ…」
「バカですか?……それじゃ意味がないでしょ?」
これ以上、お荷物になりたくないと言うのが解らないか?
「リンこそ解ってないよ。俺はリンがいないと寝れないんだよ?」
勿論私だって覚えてる。
その為だけに来たのだから。でも、ここまでの旅路で私は役立たず以外の何者でもなかったのが、思いの外悔しかった。
「眠る迄は側にいますから…」
「ダメ……離れて寝る事は許さないよ?」
お互い、一歩も引かないまま夕食だと呼ばれてしまった。
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