第28話 京の存在意義
「私は帝国が滅んだのではないかと心配していたのだ。それは、私を創造した
「それはどういう事なのでしょうか」
「クレド様の身に何かあったのだ。それ以上の事は分からぬ」
京の話は続く。
「クレド様との絆が絶たれれば私の力も徐々に弱まっていく。あの程度の水害で結界を破壊されたのもその理由によるものだ。クレド様の身に何かあれば、帝国が滅んでいても不思議はない。しかし、そうではなかったという事だな」
「その点についてご心配されることはございません。日本とアルマ帝国との国交は、現在も途絶えることなく継続しております」
「わかった」
頼爺の話に頷く京。
京は更に話を続ける。
「地球とアルマ帝国とは約150光年離れている。その位置はおうし座の角ヒアデス星団の中だ。そこにあるアルマという名の惑星、私はそこから来た。その惑星アルマを支配しているのがアルマ帝国であり、クレド様はそのアルマ帝国の守護神なのだ。私は皇帝専用として創造された護衛用の自動人形だ」
「それでは体も中身もクレド様の創造によるものなのですね」
「そうだな。つまり私自身は、自分で言うのもおこがましいがクレド様から分かれてきたものだ」
「なるほど。それ故神格を持つという事なのですね。ではなぜ地球へと来られたのでしょうか」
紀子先輩の質問に頷いている京。そのまま頼爺を見つめるが、頼爺もにこやかに頷いている。多少の秘密は話しても良いという意思表示なのだろう。
「元々、アルマ帝国と地球は親交があったのだ。現代ではムー帝国の後継となる日本との親交が厚い」
「ムー帝国とか、信じられないのですが?」
「教科書に出ていない歴史などごまんとあるのだぞ」
「はあ」
確かに、教科書に出ていない歴史はごまんとあるのだろうが、幻のムー帝国などと言われても困る。しかし、それを言うなら宇宙人も同様なのか。歴史的に確認されていないからと言って無いと決めつける事も不作法なのだろう。しかし、日本がムー帝国の後継であるとは驚きだ。
「ある時、アルマ帝国の皇族が日本を訪れたのだ。親善のためにな。その時私は護衛としてここに赴任した」
「750年位前ですね」
「そうだな。教科書には元寇と記載されている時期だよ」
元寇の頃だという推測は当たっていた。それではチンギス・ハーン率いるモンゴル帝国に例の
「帝国よりの
「では、モンゴル帝国がユーラシア大陸を席巻したのは
「そういう事だ。もちろんモンゴル帝国が、当時最も優秀な軍組織を持っていたのは事実だ」
「しかし、
「その通りだ」
「京様は日本で防衛戦に参加されたのですね」
「貴様も一緒だったぞ、朱人」
「俺もですか?」
「ああそうだ。貴様は前世においてそういう経験があるのだ。私と共に
「それで俺を選んだ?」
「そういう事だ。貴様は表面上忘れているが、魂の奥底で記憶している。だから魔法少女として戦えたのだな」
なるほど。体が勝手に動いて勝手に戦っていたような気がしていたのだが、それは京に操られていたのではなく京の助力で過去世の力を引き出していたという事か。それならば、最初に京と出会ったときは偶然だと思っていたのだが偶然ではなかった。京は俺の窮地を見て救助してくれたのだ。その通りだと言わんばかりに京はニヤニヤしながら頷いていた。
その時、部屋をノックしてからアンドロイドが入室してきた。
「失礼します。警備部より伝言が二件です。一件は副社長宛で、田床山の現場まで即刻来て欲しいとの事。もう一件は三谷先生宛てで、同行を求められております。赤城副隊長が迎えに来られております」
恭しく礼をするアンドロイド。
「それでは京様。失礼いたします」
一礼をして退出する頼爺。
京もその後に続こうとするのだがとりあえず引き留めた。
「京様。着替えませんか。その恰好ではかえって目立ちます」
「そうか? 貴様は気に入っていたのではないのか。女児のブルマは大好物であろう」
「そんな事はありません! それは多分頼爺の好みです」
「そうですよ。京様。あんのクソジジイはまあ何と言うかロリコン入ってて大変なんだから」
「紀子先輩は対象外なんですか?」
「関係ないわよ。私も薫ちゃんも対象外です」
「ロリコンとか関係なくって、あの年齢の方なら普通だと思いますけど」
「それがねぇ。そうじゃないんだよ。あの年でロリコン、ついでに巨乳マニアで童顔好み。貴方の教え子の星子ちゃんはマジで危険だよ」
「そうなんですか?」
「そうなんです!!」
薫さんがきっぱりと肯定した。
「だから、私たち貧乳コンビは対象外なのさ。あはははは」
紀子先輩の乾いた笑い声が響く。俺達が馬鹿な話をしていた間に、京はワンピースに着替えていた。
「ところで宮内博士、あのロリコン
京の一言に目を見開く薫さん。突如叫びながら走り出した。
「待て~! ロリコン
地下なので廊下で声が反響する。
何事かと彼女を注視するスタッフが何人もいた。
「元気ですね」
「アレが十代の若さってやつだ」
「じゃあ俺はサラさんと合流しますね。紀子先輩はどうされますか?」
「ここに残ってデータの整理だ。田床山のアレに関する情報収集もしたいからな」
「頑張って下さい」
紀子先輩に声をかけてから地下の研究室を出た。広間に上がると女子生徒三人組は幼児と共にお昼寝中だった。
「手伝うって言ってこれなんだから。全くもう」
正蔵少年はご機嫌斜めな様子だった。
「三人をよろしく」
「ええ。任せてください」
ムッとしながらも頷く正蔵少年だった。根は良い子だ。
ロビーに出ると、頼爺と薫さんを乗せた4WD車が走り出したところが見えた。今から田床山の現場へと向かうのだろう。そしてサラさんと一人の男子生徒がいた。この長身の生徒には見覚えがある。星子たちと同じ二年C組で、名前は確か
夕凪が一歩前に出て挨拶をしてきた。
「はじめまして。三谷先生」
「はじめましてじゃないだろう。学校で何度も顔を合わせている」
「確かにそうですが、今日は機装院流法術の師範として参りました。僕が自身の立場を明かすのはこれが初めてですから」
「機装院流法術? そんな流派が実在していたのか」
「ええ。僕はその124代目の当主となる者です」
もちろん驚いた。
彼の出す右手を握り握手を交わす。そんな家系があったとは知らなかったわけだが、そうすると夕凪春彦も俺と同族という事になるのだろうか。
ポーカーフェイスを決め込んでいる彼の表情からは何も伺えなかった。
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