再戦苦戦☆邪なるもの
第15話 邪なるものvs戦闘用アンドロイド
壁に設置された小型のモニターに、外の様子が映し出される。紀子先輩がパネルを操作すると、アニメを再生していた大型TVも画面が切り替わり外の画像を映した。三人の女子生徒は文句を言うわけでもなく、息をのみその様子に注視している。
ガンメタリックに塗装された二体の戦闘用アンドロイド。それらがトレーラーの正面に立つ。両拳を握りしめて半身に構え、ゆらゆらと体を揺らすその動作は武闘家のようだ。
道を塞ぐ位置にでんと構えているのはアフリカゾウ。肩高は5m以上あり、二階建ての家が歩いているような威圧感がある。そしてその長大な牙は4m以上ありそうだ。
ゾウの脇に控えているのがチータとシマウマだ。
巨大なアフリカゾウの脇にいるせいでさほど巨大さは感じないが、それでもチータの肩高は2mほど、シマウマの肩高は2.5m程度はありそうだ。自然界ではありえない巨大さである。
「プリンス! デューク! 遠慮は無用だ。叩きのめせ!!」
『
通信で返事を返してきた。
二体は同時にアフリカゾウへと駆けていく。アンドロイドと言えば鈍重なイメージがあるが、まるでアスリートのような機敏な動作であった。
「いっけぇ~!
プリンスとデュークの右拳が白く光った。そして目にもとまらぬ速さで……本当にパンチが見えなかった……光る拳をアフリカゾウの前脚へと叩き込んだように見えた。しかし、チータとシマウマが更に高速のタックルをかまして二体のアンドロイドを弾き飛ばした。
プリンスとデュークはアフリカゾウの正面でお互いにぶつかり火花を散らす。
「しっかりして! 反撃よ!!」
『
衝突した際に結構な衝撃があっただろうに、それをものともせず行動を開始したプリンスとデューク。光る拳を、今度はシマウマとチータに向けて振る。
チータはその光る拳を難なくかわしたが、シマウマの方は左前脚に直撃した。その直撃した部分……人間でいえば二の腕にあたる……は爆薬でも仕掛けられていたように爆散した。
「いいぞデューク! クリーンヒット!」
それでも怯まずに体当たりをかましてくるシマウマ。デュークはそのぶちかましをモロに受けてしまい、アフリカゾウの方へ弾き飛ばされた。
そして、巨大なその前脚で踏みつけられる。
もう一体のアンドロイド、プリンスの方は直ぐにデュークの支援へと向かったのだが、その右腕にチータが噛みついた。火花を散らしてプリンスの右腕が千切れてしまった。
「タングステン系の装甲を……マジか。たかが動物と舐めてた。連携してるしこいつらは強いぞ」
「支援を求めた方が……」
「まだまだ。レーザー剣を抜刀せよ。切り刻め!」
紀子先輩のやや焦った指示が飛ぶ。プリンスとデュークの左腕から赤い光の刃が伸びていく。
武装してないんじゃなかったのか?
(飛び道具を装備していないだけなんだろう。近接格闘戦用なら武装ではないという合理的判断なんだ)
突然、京が話しかけてきた。
(何が合理的なのかわかりませんが、お目覚めですか?)
(こんな騒ぎで目を覚まさないわけがない。鋼の戦士が活躍するところを見守ろうではないか)
(はい)
ゾウに踏まれていたデュークのレーザー剣アフリカゾウの脚に突き刺さる。アフリカゾウはたまらず脚を上げ、デュークは素早く立ち上がった。
片腕のプリンスはレーザー剣をシマウマの首に突き立てるが、その左腕もチータが噛みつき砕いてしまった。両腕を失ったプリンスはシマウマに弾き飛ばされる。そしてその胸にアフリカゾウの牙が突き刺さった。
「やだ」
「やられたのか」
「信じられない」
三人の女生徒が悲痛な声を上げる。
胸をアフリカゾウに貫かれたプリンスは数秒火花を散らしながら痙攣して動かなくなった。アフリカゾウは首を大きく振って、牙に刺さっているプリンスを放り投げた。
シマウマにレーザー剣で攻撃を仕掛けるデュークだが、それもチータの体当たりで阻止された。そして左腕がチータに噛まれて千切れてしまう。
「不味い。レーザー剣が封じられた。バロン。支援だ!」
「了解」
紀子先輩の指示に運転手のバロンが返事をした。
帽子を被り制服を着ているバロンは
左腕をうしなったデュークは光る右拳でチータ相手に戦っているのだが、その拳は素早い動きのチータにかすりもしない。チータはデュークの右足に噛みつき、軽々とデュークを上方へと放り投げた。そしてデュークの胸もアフリカゾウの牙に貫かれた。
「信じられない。対人戦用のプログラムで化け物じみた動物と戦うのには無理があったか」
眉間にしわを寄せ、歯ぎしりをしている紀子先輩。
「本当にやられちゃった」
「これは不味いですね」
「動物なのに強すぎるだろ」
心配そうに画面を見つめる女子生徒三名。
そして、紀子先輩と女子生徒三名が俺の方を向いた。
「朱人。お願い」
「ミミ先生」
「先生」
「……」
紀子先輩。星子、羽里、知子。
四人に見つめられる。
(京様。出番ですね)
(仕方がないのお。はやり人間の力では
(ではお願いします)
(任せろ)
チータとシマウマがトレーラーに体当たりをしてきた。
トレーラーが激しく揺れる。女子生徒三名は抱き合って悲鳴を上げた。
アフリカゾウものっしのっしとこちらに進んできていた。もう、一刻の猶予もない。
俺の体は眩い光に包まれ、そして星子そっくりの体形をしている魔法少女へと変身した。変身中ははやり何も身に着けていない状態、すなわち素っ裸なのであるが、眩しく発光しているため裸体を見られることはない……と思いたい。
そして黒い衣装、メイド服が体を包んでいく。半袖でヘッドドレスを身に着け白手袋をはめている。スカートの丈は短く、ブーツを履いているものの素脚は晒していた。胸から腹にかけては花柄の刺しゅうがしてある白いエプロンとなっている。右手には紫色の大きな宝石がはめ込まれている錫杖を握っていた。
(行くぞ)
(はい京様)
俺の体は再び光を放ち、瞬間的にトレーラーの外へと飛び出していた。
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