第14話 私だけじゃなかったんだ
高校2年生の時、クラスメイトになった由実は市松人形のようなかわいらしさを持った子でした。
虫も殺さぬ顔をして、酒は飲むわタバコは吸うわ万引きはするわで、とんでもないヤンチャな子でした。
なんとなく仲良くなって、良く学校を勝手に早退して、由実の家に行って焼きそばを作って食べながらおしゃべりを延々としていました。
どちらかと言うと厳格なうちの両親とはちがい、由実のところはお父さんが再婚相手なんだそうで、まぁ、複雑な家庭の部類に入るでしょう。
そんなんだからか由実や私が毎日のように学校を抜け出して焼きそばを食べながらタバコを吸っていても文句も言わず、たまには夕飯までご馳走になって帰る始末でした。
由実はあまり私の家には来たことがなかったんですが、珍しくうちに来た時に、ポツリと「あたしね、幼稚園で男の子のチンチンしゃぶって先生に怒られたの。なんでかって、うちの父親にいつもさせられてたから、当たり前のことだと思ってたの」と言いました。
これはさすがに由実の自宅では言えないことでしょう。
父親と言うのは、お母さんの再婚相手なので、義理の父と言うことになります。
私はこれを聞いて目の前が真っ暗になりました。
「私もなの」と言いたかったんですけれど、雄一のことを話すには、まだ心の整理がついていませんでした。
「このこと、黙っててね、誰にも」と由実が言ったので私は頷きました。
高校3年生になって由実は家の近所の喫茶店でバイトを始めました。
マスターは30代の在日韓国人男性です。
高校生の由実にマスターはすぐにちょっかいを入れて、ふたりは懇ろになりました。
「マスターは家庭持ちだし、止めときなよ」って私も他の友人と一緒になってその関係に水を差したんですけれど、「だって、服買ってくれるし」と由実は聞く耳を持ちませんでした。
ふたりの関係はあっと言う間にマスターの奥さんにバレてしまって、当然、由実の家もマスターの家も大騒動です。
由実の家では両親揃ってマスターと別れるように言い渡したんですが、由実は「あたしにチンチンしゃぶらせたヤツが何言ってんだよ」って反撃したそうです。
それを聞いて私が由実を見る目がちょっと変わりました。
そのカードを切るのはこのタイミングじゃない。
損得計算のできないバカな子なんだ、って。
そこから私はだんだん由実とは疎遠になって行きました。
彼女は高校を卒業してすぐ、デキ婚と離婚をして再婚もしました。
4人の子どものお母さんになって、学会員になったりアムウェイやったり、ちょっと私とは人種がちがう人になってしまったので、今は連絡を取り合っていません。
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