第8話 引っ越し
私が小学校6年生の時、とうとう私たち家族の家ができました。
親戚一同集まってのお引っ越しは大変でしたが私は自分の部屋を作ってもらえて大喜びでした。
ただし部屋に鍵はありませんでした。
これは思春期を迎える私たちきょうだいのことを杞憂してわざと鍵をつけてくれなかったんだと思います。
つまりそれだけ私たちきょうだいは親の信頼をかちえていなかったようです。
ふーん、だったら、雄一のことは?
親の考え方に対して言ってやりたかったんですけれど、3年以上続いている性虐待をそんなに軽々に口を割ることはできませんでした。
私は小学校6年生で卒業まであと半年ほどだったので、転校したくなくて、バスで小学校に通いました。
伯父の家の2階に住んでいた、小学校2年生くらいからだったと思うんですけれど、私の希望で近所の英語塾に通っていたのも止めたくなくて、続けて通いました。
母に150円バス代をもらうんですけれど、片道2キロほどの道のりを歩いて通って浮かせたバス代で文庫本を買っては読んでいました。
中学校に入学した年かな?
「飛ぶのが怖い」ってアメリカの小説がベストセラーになっていたんです。
ここからだと思うんですが、「翔んでるオンナ」みたいな概念が流行って、桃井かおりや秋吉久美子がバーッと人気が出たんです。
飛ぶのが怖いを私は夢中になって読みました。
中に主人公が13歳でボーイフレンドとイチャついて、自分は妊娠したに違いないと観念して拒食症寸前になってしまう描写があったんですが、こんなに思春期の私にとって共感できた小説はそれまで読んだことがなかったと思うほどでした。
この小説の影響でヘンリーミラーの小説も読むようになりました。
こちらはさすがに13歳の小娘にはむずかし過ぎましたが、なんとなく分かるんです、言わんとすることが。
読書をするには体力が必要です。
若くて体力が有り余っていた中学、高校時代の私は部屋にこもると本ばかり読んでいました。
あの頃、あれだけ今にして思うとむずかしい本を読めていたことが今の自分の血となり肉となっていると思います。
ウラジミールナボコフの「ロリータ」も読みましたが、ただの変態オヤジじゃないかと思っただけです。
もったいぶっているだけで雄一とちっとも変わらない変態です。
スタンリーキューブリックの映画も見ましたが、こちらも併せてバカじゃんの一言で終わりました。
中学生になり食欲が増した私はムクムクと肥り始め、学校でいじめに遭うようになりました。
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