第2話 新しい同居人
私が小学校に入学した頃、従兄弟の常雄さんが住んでいた六畳間にその兄の雄一が同居するようになりました。
雄一は自衛隊に入っていたんですけれど、それを止めてトヨタ関連の会社に就職したようでした。
陰気な性格の常雄さんと違い、陽気な雄一に私と弟はすぐになつきました。
トヨタ関連の会社にいたからか、雄一はスポーツカーみたいな車を持っていて、私と弟をたまにちょっとしたドライブにも連れて行ってくれました。
うちは父も母も北海道出身で、親戚はみんな北海道内に住んでいました。
特に父方のきょうだいは11人いて、父はその末っ子でした。
父方のきょうだいは半数が札幌市内に住んでいて、週末になると私たちが「下のおじさん」と呼んでいた伯父の家に集まり徹夜で麻雀をしていたんです。
母は伯母の手伝いで麻雀をしている男性陣に飲み物や食べ物を出す係で、週末の夜は私と弟は2段ベッドでふたりきりで眠っていました。
私が上の段、弟が下の段で寝ていました。
階下からは麻雀の牌をかき混ぜる騒々しい音や、男性陣の賑やかな笑い声が聞こえていました。
それが当たり前と思っていた私が小学校3年生になったある週末の夜、いつも通り麻雀の騒々しさの中で眠っていた私の足首を誰かが掴んで目を覚ましました。
父がふざけているんだろうと思って起き上がろうとしたら、指を手に当てて「シーッ」と私を制する声は雄一のものでした。
何が起こったのか分からず、困惑する私の足を雄一はさすり上げ、その手はやすやすとパンツの中に入って来ました。
雄一の指は私の性器の構造を確認するかのように仔細に指でまさぐり続けました。
私はまだ9歳です、快感なんかあるはずもありません。
2段ベッドの下の段で眠っている弟が起きて騒いでくれないかな、と思っていたんですけれど、こんな時の弟は何の抑止力にもならないんです。
私はその後も何度も彼には失望させられました。
じゃ、どうして私が騒ぎ立てなかったかと言うと、「この状況を見られたら私が母に叱られる」って思い込んでいたからなんです。
これはもう、石井さんちの伯母さんの件で分かっていたことですから。
うちの母は怒ると怖いんです。
デレッキと言って、石炭ストーブをかき混ぜる鉄の棒で私と弟を叩く気性の激しい人でしたから。
デレッキで叩かれると痛いんですよ。
「母に叱られるくらいなら、雄一の好きなようにさせておこう」と、9歳の女の子の浅はかな決断でした。
これが地獄の道への入り口だったんです。
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