失われた子ども時代

たかの実草

第1話 叱られるのは、私

私が生まれ育った街は札幌です。

両親はそれぞれ中学校を卒業してからすぐに地方から札幌に出て来て、お見合い結婚をしました。

父が26歳、母が21歳の時に私が長女として生まれ、両親は「家を建てる」ことを決意しました。


今も昔もそうですが、家を建てると言うことは、お金の面では簡単なことではありません。

どう言う取り決めがあったのかは知りませんが、それまで住んでいたアパートを引き払い、父の兄の家の2階に私たち家族は引っ越しました。

伯父の家は今で言う二世帯住宅のようになっていて、2階にはキッチンがあり、六畳二間が私たち家族の住まいでした。


2階にはもう一部屋六畳間があり、ここには北見に実家がある従兄弟の常雄さんが住んでいました。

子どものいない伯父夫婦は常雄さんと養子縁組をしたかったようです。


やがて弟が生まれ、私たち家族は4人になりました。

母は近所の病院の掃除のパートに出かけるようになり、私と弟は家から歩いて10分ほどの距離の父の姉、石井さんの伯母さんの家に預けられるようになりました。


私は子どもにも容赦しない厳格な気質の伯母になついていませんでしたし、伯母も私のことが好きではないようでした。

ただ、石井さんの家の小学生のお兄ちゃんたちがたまに食べ残して持って帰って来る給食のパンが私は好きで、お兄ちゃんたちにはなついていました。


ある夏の日、お兄ちゃんたちは私を2階の自分たちの部屋に連れて行き、パンツを脱がせました。

そして、性器を触ったりプラグのようなものを差し込んだりして遊んでいました。


そこに石井さんの伯母さんが突然現れ、「実草!あんた一体なにしてんの!」とものすごい剣幕で叱られたんです。

3歳の私の性の目覚めがこれです。


三つ子の魂百までと言いますが、3歳の私は分かってしまったんです。

やったのはお兄ちゃんたちでしょ?どうしてお兄ちゃんたちは叱られなくて、私だけがこんなに叱られるの?

性暴力に対しては女性が被害を受けても加害者と見なされると3歳の子どもが把握してしまったんです。




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