物語の結末



「この度は、本当にありがとうございました──」


 星が見える王城のすぐそばで、王女はお礼を言った。


「結局、あなたを殺した理由はなんだったのでしょうね」


「……きっと、戦争のための口実を作るおつもりだったのでしょう」


 そして王女は続けて言った。


「この国の王政は腐敗しています。滝沢様……いえ、勇者様──どうか、そのお力で、この国を立て直していただけますか?」


「……できるかどうかはわからないけれど、努力はしてみます」


 すると王女は心底安心したように、「ありがとうございます──」と言った。



「もうこれで悔いはありません」


 けれど、彼女の目には、一筋の涙のようなものが見えた。


 殺されてしまった悲しみは、消えるものではない。



「それでは、勇者様のご活躍を祈って──さようなら」



 そうして、王女は消えた。


 どこに行ったのかは、わからない。


 魂を救われて成仏されたのかもしれない。


 あるいは、無に還ってしまったのかもしれない。


 それは、誰にもわからない。


 きっと、これからも、ずっと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る