宵闇



 その日、茜色の夕焼けを背景に、墓守の後ろ姿をみた。


 いつものように墓石に座って、空を眺めている。


 そっと近寄ると、戦闘屋の執事が丁寧におじぎをして迎えてくれた。


 墓守もこちらに気付いた様子で、振り返った。



「やあ、処刑は今夜だろう? こんなところで油を売ってていいのかい」


「大丈夫だ。一つ頼みたいことがあってきた」



 滝沢は、墓守に計画の全てを話した。


 夕焼けの薄闇に、微笑みを浮かべる墓守の顔をみた。


「お安い御用だ。それに、協力するといったのはボクの方だしね」



 墓守は墓石から降りると、石畳に散りばめられた色葉を踏みしめた。



「代わりと言ってはなんだけど、ボクからも1つお願いがある」



 秋風に揺られるたびに、気持ちはどこまでも切なくなった。



「死者の魂を──どうか救ってやってくれ」



 墓守はもう一度、夕焼け空を見上げた。


 真冬みたいな冷たい風が吹き荒れた。


 冬の足音が、すぐそこまで来ていた。



「今夜は忙しくなるね」


 この世界を浸食しようといわんばかりに宵闇が、空を塗り替えようとしていた。

 

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