侵入



 処刑の前日の夜、滝沢は便利屋と接触した。


「……はあ、なんで私がこんなことまでしなきゃならないの」


 依頼内容は、王城のある部屋まで“荷物”を運び出すこと。


「依頼料はきっちり取からね、まったく……」



 王城近くの茂みに隠れている。


 城門には、2人の兵が見張りをしていた。


「……そろそろ時間ね」


 すると、彼女は手を差し伸べてきた。


「手、つないで」


「……え?」


「いいから、早く繋いでよ……! スキル使うだけだから、勘違いしないでっ」


 彼女は顔を赤らめながら言った。


 言われた通りにその手を取った。



「──“シャドウスニーキング”」


 すると、自分の体が薄くなって行き、完全に消えるのがわかった。



「この魔法は発動したとき、触れていたもの全てを透明化させる。持続時間はもってせいぜい20分ってとこね」


 見張りの交代の時間がやってきたのか、城門が開く音が響いた。


「さ、行くわよ」



 城の中にはあっさりと侵入できた。


 音を立てずに、広間の階段を上り、最上階を目指していく。



「……ここだ」


 メイド長に聞きだした情報によると、この扉の向こうが目的地──。


 便利屋は扉に耳を当てる。


「……大丈夫、中には誰も居ないみたい」


すると、彼女はポケットの中からスクロールを取り出すと、


「──“アンロックドア”」


 部屋の鍵が開いた音がした。


 そして、静かに扉を開いた……。

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