第12話 真実

 『先日は怖い思いをさせて、ごめんなさい。』

 先輩から連絡が届いたのは、それから二日後のことだった。

 長々とした文章だったけれども、先輩の気持ちは有り難い程身に沁みた。

 やはり先輩は私のために旦那様を呼び出したのだ。

 どんな方法でかは、具体的に書いてなかったけれども、私の知らなかったことが綴られていて、私はやっと旦那様のことを理解できた気がした。

 


 旦那様の正体は『龍神』様。

 魚の鱗を持ち、鹿の角を生やして口は張り裂けんばかりの大きさ、ワニの顔をしており、胴体は蛇のように長く、鷲の鉤爪を持っている。

 先輩も『龍神』様の一種で、旦那様より格下の『水龍』様なのだという。

 旦那様は『龍神』の中の頂点に座す『龍王』の称号を持っているものの、人間界の暮らしを余りにも知らなさ過ぎたため、一年前先輩ともう一人の『龍神』様と共に降りられた。

 その時に出会ったのが私だった。

 『龍王』の力に引っ張られた人は古代の日本史以来初めてのことで、旦那様達は予想外の出来事に混乱されたという。

 そして、その時引っ張られた私は、そこで意識を失い、魂を彷徨う状況になってしまった。

 人を害することのないように、慎重に選んで、『天の架け橋』を渡ってきたが、私がその影響を受けてしまったと。

 そこで、先輩達は悩んだ挙句、私の中の記憶を塗り替え、曖昧にさせることで自分達と私の危険を回避した。

 しかし代償は大きかった。

 先輩達は元の姿に戻れなくなってしまったばかりか、旦那様と離れ離れになってしまった。

 「『水龍』と『火龍』の目的は、『龍王』が何不自由なく、支障なく『人間界』での修行を終えることだった。

その役目を果たす為、慌てて私は『龍王』を探した。」

 情報網に長けた『水龍』は、すぐに旦那様を見つけることが出来た。

 旦那様は感情の起伏が激しく、少しの歪みでも『日の元つ国』を滅ぼす危険性を秘めている。

 『水龍』と『火龍』が揃うことで、旦那様はある程度力を制御出来ると。

 しかし、先輩が目にした光景は、私が「旦那様」と呼び、旦那様が結婚しているというお姿だった。

 「本来、人と龍が交わることはありえない。けれども、その光景を目にした瞬間、一縷の希望をも見出した。」

 彼ら『龍神』よりも更に上の存在があり、その方の御意向で「天のとき」を迎え、神と人が一緒になる時代が来ているという。

 「その形を現したのが、あなた達二人だとしたら。それは私達にとっての『希望』でもあった。」

 そこで『水龍』である先輩は、旦那様の近くで補佐しながら、私達を見守ることにしたと。

 旦那様の力は例え、元の力よりも弱ってはいても、国を揺るがしかねない程の大きな力を持っており、一歩力の使い方を間違えれば、国は滅んでしまうと。

 

それが、私の知らない真実だった。 

「あなたにとっては、嫌なことだらけかもしれない。けれども、どうしても私にもやらなければならないことがあって、あなたを利用して傷付けてしまった。

 本当にごめんなさい。」


 その文章を読んだとき、私はある一大決心をした。

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