第2話
雪が降っている。
暗い空から数千、数億の蛾が舞い降りてくるように、白く、平たく、軽い、雪片がゆっくりと落ちてくる。
それとも、進んでいるのは私の方だろうか? 空に向かって、高く、高く、私は天に昇っていくのだろうか?
違う。赤ん坊の泣き声がする。
赤ちゃん?
事故にまきこまれた?
私は、はっと起き上がった。
「アラン、アラン!」
「赤ちゃんが泣いてるの。助けてあげなくちゃ」
「アラン、どこにいるの?」
暗い。そして、雪が降っている。
おかしいと、私は思う。雪が降っている。今は七月なのに。
赤ちゃんの声が小さくなる。
寒い。
「アラン? 赤ちゃんが凍えてしまう」
私は、声のする方へ這っていく。一度顔を背けて吐く。泣き声がまた大きくなる。木々の間に他の音はなく、雪はむき出しの腕を刺す。
太い木の根元に、小さな布包みがある。声はそこから聞こえる。私は包みを拾い上げる。
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