第2話

 雪が降っている。

 暗い空から数千、数億の蛾が舞い降りてくるように、白く、平たく、軽い、雪片がゆっくりと落ちてくる。

 それとも、進んでいるのは私の方だろうか? 空に向かって、高く、高く、私は天に昇っていくのだろうか?

 違う。赤ん坊の泣き声がする。


 赤ちゃん?

 事故にまきこまれた?


 私は、はっと起き上がった。


「アラン、アラン!」

「赤ちゃんが泣いてるの。助けてあげなくちゃ」

「アラン、どこにいるの?」


 暗い。そして、雪が降っている。

 と、私は思う。


 赤ちゃんの声が小さくなる。

 寒い。


「アラン? 赤ちゃんが凍えてしまう」


 私は、声のする方へ這っていく。一度顔を背けて吐く。泣き声がまた大きくなる。木々の間に他の音はなく、雪はむき出しの腕を刺す。

 太い木の根元に、小さな布包みがある。声はそこから聞こえる。私は包みを拾い上げる。

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