第16話 王国兵士に扮して市民を救え!【オネスト編】


 次の日の晩、オネストは見張りの任務を終えて、王国領地に侵入していた。


やるべき事をやる前に、昨晩エミリアに握られた手を見つめる。

しばらく見つめると手を握り締め、移動を開始した。


エミリアから知らされた情報を元に巡回している、兵士の背後から忍び寄り、そして口を押さえる。


最初暴れていたが、次第に腕の中で動かなくなった。


(………)


兵士の首元にスっと手を伸ばし、脈を測る。

気絶しているだけの様だ。


倒れた兵士を草むらに引き込み、服を着替えた。


(サイズがピッタリじゃないか…久しぶりの王国の軍服だな…)


オネストは草むらから出ると堂々と街の中を歩き始めた。


次々に家をノックをして話をする。


「こんばんわ…夜分遅くにすみません」


扉を開けたのは中年男性だった。

顔は如何にもダンディーな感じだ。

お腹周りは中年特有のちょっとした小太りでは無く、寝間着の上からでも程よく引き締まっている筋肉なのが分かる。


「いえいえ!こんな夜中に一体どうされたんですか?」


「いえ、実は明日ここで侵攻作戦が予定されているのですが、一般市民の避難を命令されまして…、着の身着のままで申し訳ありませんが急遽避難して貰えないでしょうか?」


「何を言いますやら!わたくし共は死を迎えるその日まで王国と共にあるのですぞ!共に戦いますとも!」


「その王国の命令です、市民の命を優先しての事なんです。(一筋縄では行かなそうな人だな…)」


「おぉ、なんと言う寛大な御心…王国国民で大変喜ばしい限りです!」


「ありがとうございます(意外と聞いてくれた…)」


男性はそう言って扉を閉めた。

次の家へと向かう途中オネストは呟いた。


(あれだけ、王国を愛してくれている国民も居るのに…つくづく思うなぁ…実態を知ればどう思うんだろうか…)


そんな事を考えていたら、次の家に着いた。

ノックをしたら今度は髪を後ろにくくっている女性が出てきた。


「夜分遅く大変申し訳ございません」


「どのようなご用件でしょうか?」


そう言う女性の眼は怪訝な表情を浮かべている。

こんな夜遅く訪問して来たら、いくら信頼を寄せる王国兵士でも不安を抱くのは当然だ。

そんな表情も意に介さずオネストは続ける。


「明日王国がこちらの街が侵攻作戦の区域内ですので、一般市民の避難を急遽行っております」


「そうだったんですね…」


「大変突然で申し訳ありません」


「いえいえ、むしろわざわざこの様な夜中にまでお気を使わせてしまい。大変申し訳ございません、”手紙の事”がございましたので些か不安でしたのもありましたので…すぐさま避難をさせて頂きます」


女性は丁寧な口調でそう伝えた。


「ご協力ありがとうございます」


そう言って家を後にした。

女性はオネストの姿が見えなくなるまで、扉を閉めなかった。


(ふぅ…これで全部終わった…作戦成功だな…)

















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