第11話 命とお金
オネストはエミリアに耳打ちをした。
「確かにそうすれば!.......だが、信用して貰う事など出来るか?」
「やらないよりはマシだろう?それにこれが上手く行ったら俺は報酬を増やされるかも知れない。俺だって市民を殺したくはないからな?
だが国境を越えてまで市民に話をする…傭兵と言えど、帝国側に属する兵士だ。
今後傭兵としても生計を立てて行くのは難しいだろう。
だから帝国側にバレた時は『助けた市民』から報酬を貰う(俺ながら最高の案だ、30人と言う事を考えたら…1人ずつ1万オロでも30万オロ…)」
「……(それは分かるがいくらなんでもこの状況でお金を取るなんて…)」
怒りに満ちているエミリアの表情に気付かず、オネストは目の前で手を振って返事を促す。
「お〜い、エミリア?聴こえてる?」
「あんたは本当に金の事ばっかりなんだな」
「えっ??だって雇い主である帝国にもしもバレたら食っていけなくなるんだぞ?(言いたい事は分かっている…だがその中でもお金は大切だ)」
「確かにそうだが、お前の頭の中の「善意」には「お金」が伴わないといけないのか?この状況で”見返り無しに”市民を助けるのは当たり前では無いか?(もしかしたら…殺されるかも…)」
「……… ”元々山賊のお前” に言われたく無いな…」
「(そこまで言わなくても!!)…た、確かに私は山賊だ!だが私はお前ほど ”金の亡者ではないっ!!” 確かに盗みは悪い!それは分かっている!
だが私は盗みを働く中でも自分の中の意志に則ってやってきた!
だがオネストはどうだ!?金の欲にまみれ、常に自分の懐を肥やす為にしか考えていないではないか!?
その中に自分の意志はあるのか!?
なにも得を考える事を悪いとは言わないっ!だがその
だが心に決めてる物もある!
「弱き者から取らず、人を殺めてまで取らず」だっ!
今まさにオネストが取ろうとしている相手は「弱き者」では無いか?」
力が籠ったのか、エミリアの頬には一筋の涙が伝うが視線はオネストの眼を見つめたままだ。
その顔を見てオネストは目を逸らした、それは恐らくエミリアの言っている事を理解はしているのだろう。
だが、オネストからしたら今後の事などの上でお金も大切だ。
自分の「意思」か「欲」か?
「わかったよ…《今回》だけだぞ?(はぁ…お金が…バレたら傭兵引退かな…生活どうしようか…)」
「ありがとう!」
そう言ってオネストの顔に手を添え額にキスをした。
「お!お前何するんだ!?いきなりそんな事するな!!」
横を向いていてもオネストの顔は紅潮しているのが分かる。
あまりに突然で驚きと恥ずかしさもあったのだろう。
「ふふっ(根は良い奴なんだよな…)」
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