第10話 名案か迷案か…それか金か…
オネスト達は立ち上る黒煙の方へ歩みを進める。
林の中の道を抜けて、視界が広がってくる。
見えて来たのは「オルディネ」の正門だ、見上げるような高さがあり。
元々立派な門だったのだろう。所どころは崩れ落ち、色は剥げ。
街の紋章は半分消えて地面に落ちている。
「オネスト?」
「どうした?」
「ここの街の意味を知っているか?」
そう言うと門を見上げた。
「この街は元々「帝国」と「王国」が争うことなくお互いが繁栄するようにって付けられたらしいぞ」
「そうだったのか?(だから”
「あぁ、だが奇しくもこの街が”開戦時”最初の戦場になったらしい、皮肉なもんだな?まぁ、私は話を聞いただけだからな。詳しくは知らないが…」
「そうだろうな…誰も本当の真実を知らずに嘘や噂が広まれば、それが真実になるものだ。だが、お前が言っている事は本当だろうな。傷もひどいが門自体がくたびれてる」
「…(こいつ珍しく金以外の所を見ている?)
そう言って2人は街の中に入って行く。
向かう先は近くの帝国側の前線基地、傭兵の為ここに向かい命令を聞かなければいけない。
エミリアには基地の近くで「待っててくれ」と伝え基地に入る
中は人で一杯だ。
みんな常に動き回っている、前の見張り小屋と比べかなり騒々しい。
恐らく部下であろう者に指示を出している男性が居た。
「オネストです、依頼を受けて参りました」
「あぁ、来たか傭兵。お前に早速だが命令がある」
「はい、何でしょうか?」
「これから王国軍がこの街に向かって攻めてくるという情報だ。ここの街を突破されれば帝国側への侵攻を許してしまうが……守るのは散々慣れている。だが一番厄介なのは”王国賛成派”の住民達だ。攻めてくる王国軍に加担しかねない。それに前よりも過激さを増している」
「一般市民を殺せ…と言う事ですか?」
「致し方ない、今までの市民同士の小競り合いで ”こちら側” も被害に遭っているのも事実だ。
今回の戦いではもちろん、 ”市民同士の小競り合い” では済まないだろう。
そうなれば【帝国市民】を何としても守らなければいけないからな?
それに報酬なら安心しろ。手を汚した分だけ出す、だが…もし汚さなくて済むならそれに越した事は無いんだがな…」
「それはもし”住民”が加担しなければ…」
「あぁ、『殺さず』に済む」
「…いつ頃攻め込んで来るのか分かりますか?」
「予定としては二日後だ。お前にはその間、見張りをしていて欲しい」
「分かりました(二日後か…)」
「では、頼んだぞ。傭兵」
「はい」
基地を出たオネストは、先程の内容エミリアに伝えた。
「それって…!!」
「あぁ、実際この状況を見れば加担しないと言う方が難しいだろう。無論そうなれば全員…」
そう言ってオネストは眉を細める。
「なんてひどい事を…」
「エミリア?」
「どうした…?」
「お前…盗みに入るのは得意か?」
「まぁ、多少は…でもなんでこんな状態で盗みに入るんだよ…」
エミリアは今まで見た事無いような蔑んだ視線をオネストに向ける。
もはや視線は「ゴミ」を見ているようだ。
「おい、違う。それに頼むからやめろ…その視線…心に来る…」
「じゃぁ、なんだ?」
「いい考えがあるんだ」
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