第9話 目標と次の街へ


手を引かれるままにしばらく歩く、あんな戦いの後だと言うのにオネストは何事も無かったかの様な表情を浮かべている。


だが、あまりのオネストのやり方に忠告する。


「あれはやりすぎたんじゃ…あそこまでなにもやらなくても…」


「そう?俺からしたら正当防衛だよ。それに相手は俺らに明確な殺意を向けて来た、には躊躇したらいけない」


「確かにそうだが過剰防衛の間違えじゃ…(もしかして、私もあんな風になってた可能性もあったのか…?それにあんなにまで強かったなんて…)」


「……気を付ける(救ってあげたのにまさかの文句を言われるとは…)」



「う、うん…と言うよりいつまで手を繋いでいるんだ?」


「え?あ!ごめん!そう言うつもりは全然無かったんだ!咄嗟の出来事で!お願いだから回し蹴りはしないでっ!(もうあんなに痛いのは嫌だ…それにお金が減る可能性もあったし…)」


「何もそこまで言わなくても…それにもう回し蹴りはしないが…(本当に純粋なやつだな…お金以外は…)」


暫く林の中の道を歩く、話し終えた2人に沈黙が包み込む。


「なぁ、オネスト?」


「どうした?」


「これから先の目標とかあるのか?」


「うーん、目標か…」


そう言って首を傾げる。


「目標はまずお金を貯める事だな」


「貯めた後はどうする?」


「貯めた後には恋人と暮らす。その頃には恋愛をしてきっと良い恋人が出来ている…と思う…」


次第に声が小さくなっていった。


最後、辛うじて聞き取れる言い方をしたオネストは顔を赤らめ、恥ずかしがっている。


「オネストはすぐに顔に出るな、可愛らしい」


エミリアの心の声が漏れてしまった。


「えっ!?俺が!?か、可愛らしい!?」


「えっ!!いや、違うんだ今のは愛くるしい動物を見た時みたいな!?そうだ!言葉の綾ってものだ!(恥ずかしいな…まさか漏れてしまうとは…)」


身振り手振りで必死に弁明する姿に思わず笑ってしまった。


「エミリアってちょっと抜けてる所があるな」


「はぁ!?抜けてない!天才だっ!」


「はいはい」


「なんだその気の抜けた返事は!?」


「俺は元々こういう返事だ」


「絶対に違うだろ」


そんな事を話していると、先の方の空に黒煙が昇っている。

青空に黒煙だ。

その黒煙に気付いたエミリアは指を指す。


「オネスト!あれを見てみろ!」


「あぁ、あれが俺らが行く街「オルディネ」だ(大変そうだけど、お金は稼げそうな気はするなぁ)」


「………(話には聞いた事あるけど、あれが「オルディネ」か)」


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