第7話 転勤と廻し蹴り
「ふぅ…なんか1日が濃かったな…」
疲れ切った表情で呟くオネスト。
「お金も減ったしなぁ…」
やはり金の事を考えていた様だ。
残りの任務を終え、報告書を書き終えた時だった。
帝国兵士が話しかけて来た。
「おい、傭兵。明日からはここでは無くて王国の国境近郊の街に向かって欲しいと言う依頼が来たんだがどうだ?」
そう言って兵士は依頼書をオネストに渡す、受け取った依頼書の金額の所だけに目を通す。
「んん~…一週間の派兵契約で10万オロね……(まぁ、今よりも多少は高い報酬だし行こうかね…)」
依頼書にサインをして兵士に返した。
サインの入った依頼書を見て、兵士が質問する。
「お前、やはり気にしないんだな…」
気にしないと言うのは、依頼書に入っている具体的な内容だ。
「うん、俺は傭兵だ。危険性より報酬だ」
そう言って彼は書き終えた報告書も兵士に渡す。
「はい、これで最後の分ね」
「あぁ…了解(俺が逆の立場なら絶対にこの倍を積まれても行かないなぁ…)」
そこは王国と帝国の国境が街の真ん中を通って隔てて対峙している場所だ。
一つの街の中に戦争中の二つの国が国境と言う「線」だけで対立している。
またややこしい事にその街の中でも。
「帝国支持派」の市民
と
「王国賛成派」の市民たちが居る。
二国間の戦争と言うだけではなく、この街では一般市民すら対立して死傷者が出ている。そんな街だ。
「じゃぁ、俺はこれで上がる。またどこかで会ったらよろしくな」
そう言うとオネストは見張り小屋を後にした。
後にした彼が向かう向かった先は、彼がエミリアに渡したお金で泊まれる位の宿だ。
彼はこの近辺で事前に渡したお金で泊まれる格安の宿を熟知している。
宿に着き店主に話しかける。
恰幅の良いおじさんだ、見たところ人も良さそうだ。
「ここに『エミリア』と言う女性は泊まっていませんか?ここで会う約束をしているんです」
「あぁ泊まっているよ、「101号室」だよ」
「ありがとうございます」
「料金は2人分になってしまうけど大丈夫?」
「あぁ…大丈夫…です…(しまった!まんまと店主の罠に掛かった気がする…)」
罠とか言っているが、オネストは泊まる為に来ているのだ。
店主が言っているのは当然の事だ。
そう言われたオネストはカウンターに宿泊料金2人分を支払う。
「ありがとう、ごゆっくりね」
「はい…(あぁ…お金…)」
そして教えられた部屋番号に向かいドアをノックする。
「俺だ、オネストだ。入るぞ」
一応断りを入れたオネストは部屋に入る。
中に居たのは下着姿の「エミリア」だ。
「え!?」
「はぁ…今日も疲れた…え!?」
しばらくお互い無言になってしまった。
「お!お前!胸を触るだけでは飽き足らず、下着姿まで見るとはどういう神経しているんだ!?」
「す、すみません!!」
オネストは咄嗟に謝ったが時既に遅い、エミリアの逆鱗に触れてしまった。
下着姿だと言うのにオネストに走って
「とにかく出ていけ!私が着替え終わるまで部屋に入るな!!」
「は、はい!!大変すみませんでしたぁッッ!!」
そう言ってオネストは言い終わるかどうかで絶妙なタイミングでエミリアに華麗なる廻し蹴りを腹に食らい部屋から追い出された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます