第6話 金の為だけでは無かった!?


「ありがとう、美味しかったよ」


エミリアは感謝の言葉を言うがオネストは何か落ち込んでいる様な感じで答えた。


「あぁ、良いんだよ。それにそろそろ俺は戻らないと」


「あぁ、そう言えば任務中だったな…(なんで落ち込んでるんだ?もしかして食費を全部出してもらったからか……?)」


前から見覚えのある兵士が歩いて来た。

オネストに注意をしたあの女性兵士だ。


「おい、傭兵。いつまで油を売ってるんだ。」


「あぁ、すまない。今から戻ろうとしてたんだ」


「お前のその態度…減給ものだな?」


「それは辞めてくれ!!すまないエミリア!俺は戻るから、これで宿に泊まっていてくれ!今渡したお金より高い宿には絶対に泊まるなよ!?(迎えに行った時に追加料金とかたまったもんじゃない)」


そう言ってオネストは2人を置いて先に走っていった。

エミリアもまた、宿を探そうときびすを返した時、兵士に話しかけられた。


「お前、偉くあの傭兵と親しそうだな?」


「え?そうか?」


「あぁ、同僚から聞いたんだ。『こいつは俺の彼女だ』って」


「あぁ、そうだとも(ここは合わせておかないと…)」


女性兵士はエミリアを訝しむ表情で見つめる。


「そう言えば、お前服を着ているな?」


「え?そうか?(しまった!服を着替えていない!)」


エミリアは普段、盗む為に身軽な服装で尚且つ懐に短刀を忍ばせていた。


「もし……お前が報告にあった『王国の偵察部隊』ならタダでは済まさない」


一気に緊張が走る。

2人は互いに視線を逸らさず、身動きしない。

エミリアは忍ばせている短刀を抜ける様に、女性兵士は腰に携えている剣に手を近付ける。


しばらく見つめ合った状態で女性兵士が言った。


「冗談だよ」


「え?」


そう言うと女性兵士はエミリアの肩に手を置いた。


「女性が護身用に『短刀』を持っていても何ら不思議ではないからな」


「!?(いつバレたんだ!?)」


「だが1つだけといてやる」


「なんだ?」


「オネストの事だ。奴が騎士団を辞めたを知っているか?」


「あぁ、金の為…だろ?」


「それはさ、本当はな…」


女性兵士はエミリアに耳打ちをする。


「彼は親を『王国騎士団』に殺された」


「そ、それはどういうことだ!?彼も騎士団では無いか!?」


「あぁ、そうだ。事情は分からないが、彼の父親に不満を持つ者が居たらしい…」


「騎士団内部で内輪揉め…か?」


「そうだ、恐らくそれで彼の父親は殺された…」


「それで『傭兵』を?」


「半分は憶測だがな…わざわざ身分の高い騎士団をやめてまで、想像以上に過酷な「傭兵」をしているんだ、たぶん親のかたきを打ちたいのだろう…」


エミリアは納得した表情で呟く。


「確かに、各地を飛び回る傭兵は犯人探しに好都合…か…」


「そう言う事だ」


そう言って女性兵士が去ろうするが、エミリアが呼び止めた。


「お、おい!」


「ん?なんだ?」


「どうしてそんな事を知っているんだ?それになぜ私にそんな事を教えた?」


女性兵士はエミリアの方を向き直した。


「私の父親も元騎士団だ、今や中年おやじだがな。親父が現役中に仲間が『殺される』事件が起きたらしい、だから知っている。オネストがに来た時は驚いたよ。腰に騎士団の剣を携えてたから『もしかして』と思ったんだ。話を聞いたら『金の為』って言うもんだから笑ったよ。それと同時に私の予想は確信に変わったんだ」


「そうだったのか…」


「あぁ、ちなみに私の親父はその時は酷く悲しんでいたよ。「盟友」が殺されたってね…親父は事件後、騎士団をやめて自分で犯人を捜すために敵国こちらに引っ越してきたんだ」


「同じ騎士団だったのなら犯人は分かるじゃ…?」


その質問に女性兵士は首を横に振る。


「騎士団と言っても守る地域によって複数ある。私の親父はオネストの親父と騎士学校時代からの付き合いだ、それぞれが別の地域に配属された後も、文通はしていた様だ。それにお前に教えた理由は、ならオネストを「救える」んでは無いかとな」


「救える?」


「彼は今、仇を打つ為なら場所問わず向かう。それが危険な任務だろうと見栄えなく選んでいる。私から見れば「復讐」に囚われて自分を見失っているに過ぎない。

彼の目的は”仇打ち”であって課せられた”任務”はおまけに過ぎない。

お前とオネストが、仲が良さそうな雰囲気を見て少しは彼の「囚われた」心を溶かせれるのでは無いかとな?それにもうと親父のあんな悲しむ姿は見たくないんだ」


「…」


「と言う事だ…じゃあな」


そう言って女性兵士はエミリアに手を振るとそのまま去って行った。





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