第5話 これ以上食べないで!
酒場を後にした2人は他愛ない話をしながら歩いていた。
エミリアはオネストが携えている剣が気になり質問した。
「そう言えば、お前の剣は珍しいな」
「ん?あぁ、元々王国の騎士団に居たんだ。その時に贈呈された剣だよ」
「騎士団!?お、お前あの騎士団に居たのか!?」
「そうだ」
「どうして辞めたんだ?」
そう尋ねられたオネストは自信満々な表情で答えた。
「儲からない!」
「なっ!?え!?」
エミリアは予想外の解答で困惑してしまっている。
まさか騎士団を辞めた理由が「給料」なんて誰も思いはしないだろう。
「当たり前だろ。騎士団って言っても現実は過酷な労働で安月給なんだぞ。唯一高いのは「名誉」だけだな」
「お前……それだけで辞めたのか?」
「あぁ、名誉だけでは食っていけんからな」
「いや…そうだが…色々国から貰えたりとかは…?」
「ん?あったよ?一軒家」
「一軒家!!?ならどうして…」
「家が貰えても維持費は掛かるからな…売ったよ」
「……(いや、こいつ私が思っている以上に金の亡者では)」
ここでエミリアのお腹が鳴った。
酒場に行ったが話し合いだけで何も食べて無かったのだ。
エミリアは少し恥ずかしそうな顔をしている。
「お腹空いたのか?(あぁ…食費…)」
「す、少しだけ…」
「少しだけか…(良かった。なら我慢出来るな…いや、待てよ…このままだと可哀想じゃないか?)」
「…良いのか?」
「うん…え?」
「ありがとう!!」
エミリアはお礼を言うと満面の笑みを浮かべる。
とても嬉しそうな表情だ。
「あはは…どういたしまして…(なんでこうなったんだ…でも、そんな嬉しそうな表情を浮かべられたら今更断れない…)」
そう言って、2人は近くの食事処に入った。
テーブル席に座り注文する。
「そんなに頼んで食べ切れるのか?(これ以上頼まないで…)」
「食べれるぞ!私は食べれる分しか頼まない」
「なるほどね…(賢明な考えをお持ちだが…この量は一体…)」
オネストは運ばれ、そしてテーブルに並べられた料理を見つめて言う。
もはや料理の量は2人で食べ切れる量ではない。
「いっただっきまーす!」
「頂きます…(幾らぐらい掛かるのかな…)」
―――――――――――――――――
あっという間に料理が無くなり、綺麗な皿がテーブルに並んでいる。
「ふぅー、いっぱい食べたな!」
「そうだな…(本当にこの量を全部食べた…)」
実際彼は食費の事を考えるあまり、料理が喉を通らなかった。
オネストが残した分までエミリアが平らげたのだ。
「そう言えばオネスト?」
「ん?」
「彼女はいた事あるのか?」
「いきなり何を聞くんだよ!」
「元王国の騎士団…モテない訳が無かろう?」
「それが…モテたことない…実際傭兵になったのは…お金目的もあるが各地を転々としたら彼女が出来るかなって…」
「嘘だろ!?そんなにモテないなんて…(結構整ってて可愛らしい顔をしているのに…こうやって良く見たら割とタイプだな…)」
そして彼は綺麗に料理が無くなった皿を見つめて呟いた。
「あぁ…食費…」
「……(何となくモテない理由が分かった気がする…)」
「出ようか……」
「え?あ、うん…」
2人は席を立ち会計を済ました。
結果、この食費で2万オロの出費だった。
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