高校時代の恋愛の話

やまぞの

第1話

 妥協して選んだ高校に馴染めるか不安だったが、何となくやり過ごすことは得意なので上手く馴染めた。高校生活が始まって1カ月がたち、部活に入ったり、新しい友達と遊んだりとなかなか充実していた。そんな中好きな人ができた。彼女は中学のころからの同級生だが、喋ったことは数回あるかないかの関係。痩せ型でとてもかわいらしい顔をしており、僕のストライクゾーンにど真ん中の女性だった。高校で一緒なクラスになってから話す機会が増えた。次第に好きになった。当時の僕は恋愛経験などなく、人を好きになったことがなかった。そのためアプローチの仕方もよくわからず、随分と恥ずかしいことをしてしまった。そんな僕だが、わからないなりに頑張った結果なのか、彼女と付き合うことができた。表現しきれない多幸感と、なんで僕と付き合ってくれたのかという疑問で不思議な感覚だった。

 僕にとって初めての彼女だった。でも彼女にとって僕は何番目かの彼氏。付き合った経験があることに問題があるのかといわれればそうではなく、よくネットで言われるような処女厨ではない。複雑な気持ちになったことはあったが、そこまで大きな問題ではなかった。問題は違うところにあった。恋愛経験のない、当時の僕には彼女を受け止めることができなかった。彼女は以前付き合っていたときこっぴどくフラれ、それを未だ引きずっていた。酷い別れ方をしたのは付き合ってからわかり、そのことを告げられ僕は目の前が真っ暗になった。元カレの話なんて僕にされたってどうしようもないじゃないか。そんな気持ちにしかならず、頻繁にその話をされ彼女とたくさん喧嘩をした。

 次第に僕は正常な判断ができなくなっていた。今の僕であれば、「精神的に負担になるなら別れればいい」とか、「彼女の気持ちが落ち着くまで距離をとろう」とか、なんとか自分を守るアドバイスができる。でも当時の僕は彼女に大きな比重を置いていたので、だらだらと付き合い続ける選択肢しかなかった。距離をとるという選択肢もそのまま別れてしまうことが怖く、どうしようもなかった。随分と恥ずかしいこともした。彼女が何をしているのか気になってSNSに張り付いたり、mixiのコメントに恥ずかしいコメントをうったり、LINEのトップ画を真っ黒にしたりとまぁまぁなメンヘラだった。

 そんな恥ずかしくも辛い日々はいきなり終わりを告げた。付き合って半年で僕がフラれてしまったからだ。くだらないことで喧嘩をしてその結果フラれた。あっけない最期である。その後もメンヘラ化した僕は随分と恥ずかしいことをした。未練がましく気持ち悪い男子高校生が爆誕。今なら笑え…ない、立派な黒歴史だ。

 今思えば彼女もメンヘラだった。彼女が元カレにフラれたとき、「俺は君のごみ箱じゃない」といわれたらしい。ゴミ箱というのは、感情を無制限に突っ込んでくるということで、元カレにとって重荷になっていたらしい。フラれて少し経ってからその意味が分かった。キャパを超えた、受け止めきれない感情を受け止めると人はおかしくなる。そのことを元カレさんはしっかり理解していたんだろう。

 今はすっかりメンヘラも身を潜め、普通に生活できている。この話は結構前のことだが、今でもたまに夢に出てきて嫌な思いをする。僕にとってあの数カ月の恋愛はいろんな意味で大きな経験だ。初めての彼女でなければもっとうまくやっていけたのかもしれない。でもそういう運命だったと割り切り、教訓にして次上手くやれればそれでいいと思う。そうすることであの当時もがいていた僕を肯定できる。


 それではまた。

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