第43話

 二人が睨み合っている中、瞬く間に天気が大荒れになっていた。俺は二人の気迫に押されて女の子座りして黙って見ていた。いつもは頼りないゆなだが、今日に限っては頼もしい。蝶野さんはいつもの笑顔がなくなって、紫色のオーラを纏っていた。その姿はフ○ー○のようだった。

 「さっさと月山君から離れてください。運命には誰にも逆らえないんですから」

 また赤い糸で俺を引っ張ろうとするが、どこから出したのかゆながハサミで赤い糸を抵抗もなくぷつんと切った。張り詰めていた糸がふわりと地面に落ちた姿をみた蝶野さんは怒りから能面のような顔で絶対零度の視線をゆなに放った。正直、俺はビビりまくって顔が見れなかった。

 「何してんだテメェ。マジで殺すぞ」

 「さっきまでの可愛らしい態度はどこに行ったんですか? それにひーくんはあなたの運命の人じゃないですよ?」

 誇らしげな顔で煽るゆなにさすがの蝶野さんも顔を真っ赤にして感情を発狂に乗せて爆発させた。

 「まだ言いますかっ! 私は昔、夢の中で彼にあったんですよ?! それは紛れもない事実なんですよ!」

 怒り狂う蝶野さんにゆなは「分かってないな~」と身振り手振りでまたも彼女を煽りたててさらに怒りを誘発させるゆな。俺はただただ恐ろしくて空気になる努力をしていた。……主人公ながら情けないのは重々承知だが、それほど女の修羅場というものは怖いんです。

 「あなたが夢であったのはひーくんじゃないですよ?」

 「はあ……? 何言ってるんですかぁ……?」

 ゆなの言葉に蝶野さんは困惑と怒りが混じった声を捻りだした。どういうことか説明しろと鋭い視線を送りつけてきた。

 「あれは簡単にいえば、あなたが作り出したもう一人の自分ですよ」

 ゆなの言葉に俺も疑問の視線を投げかける。たしか蝶野さんが会ったのは男の子で頭に怪我をしていると言っていた。仮にもう一人の蝶野さんだとしたら何でそんなにピンポイントな見た目をしているのだろうか? 蝶野さんも同じような疑問を持っているようでゆなの答えを待っていた。

 「これに関しては憶測ですけど、心に救いを求めた蝶野さんとちょうど意識が現実になかったひーくんの魂が一時的に融合してしまった姿だと思います。だからひーくんはこのことを覚えていないし、もう一人の蝶野さんもひーくんに似た人物になってしまったんだと思います」

 「う、嘘だっ! そんなの信じないっ!」

 頭を抱えて脂汗をかいてガタガタ震え始めると、膝から崩れ落ちた。やり場のない怒りを鎮めるために草を力いっぱい毟ってはその場に叩きつけた。俺は静かに見てゆなは強者の笑みを浮かべていた。

 「それにひーくんの記憶には彼女にあった形跡はなかったですし」

 「それって分かるもんなのか?」

 「実は勝手に何回か覗いたんです。本人は覚えていなくても記憶ってのこるんですよね」

 勝手に俺のプライバシーが侵害されていたのは、後で説教するとしてそこで崩れている蝶野さんをどうするかとか、まだ問題は色々とあるわけでどうするかとゆなの方をみていると……。

 「そんなの認めないそんなの認めないそんなの認めないそんなの認めないそんなの認めないっ!」

 突然、声を荒げた蝶野さんに二人ともびっくりして注目していた。ゆっくり立ち上がると紫色のオーラが勢いを増した。そして、禍々しいものへと様変わりしてどす黒い色へと変わった。

 「もういいや……。こうなったら何がなんでも私の物にするんだからぁ……」

 壊れたように笑うと体に異変が起き始めた。黒い何かが彼女の全身を覆いつくすとアメーバのようにうねうね動き始めた。そして、その黒い塊は膨張して瞬く間に視界を埋め尽くすぐらい大きくなった。

 「みーんな壊してあ・げ・る♡」

 膨張しまくった黒い塊は風船のように弾けると、そこにいたのは蝶野さんじゃなく全く別の禍々しい何かがそこにいた。上半身はファンタジーで見るようなドラゴンで下半身は蛇のようになっていて蜷局を巻いている。全身が漆黒に包まれ、目が赤く不気味に輝いていた。

 「いつから○ラ○エの世界になったんだ?」

 「ふざけてる場合じゃないですよ~!? 何とかしてください!」

 目の前のモンスターを見るなり涙目で助けを求めるゆな。やっぱりこうなるのね。

 「そりゃ……逃げるしかないだろ!」

 「どこにですか~?!」

 とりあえずゆなの手を掴んで逃げるように走った。

 その間、足りない頭でどう攻略するかをフル稼働で考え込んだ。

 「もう駄目です~! 死んじゃいます~!」

 「ちょっとうるせえぞ?!」

 さっきまでの頼りになるキャラはどうした?


あとがき あーもう、(ストーリーの展開が)めちゃくちゃだよ。

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