第33話
ゆなとお昼を共にしたこと以外は特に変わったことはない日だった。希は用事があるらしいので、一人で帰っていると音もなく背後に現れた人物が一人。
「じゃじゃーん!驚きました!」
「おお……相変らず後ろ取るのが上手いな……」
「ちょっと反応薄くないですかー?」
俺の反応を面白くないと不満げな顔で覗き込んでいた。それもそうだ、最近になって何十回とこんな絡まれ方をしているので、正直な所辟易としていた。ただあまり邪険に扱うのも良くないと思い適当にあしらっている。
「今日どこか遊びにいきませんか? 最近、顔暗いですよ?」
「……そうかな」
その原因は蝶野さんなのだけど、分かっていてわざと聞いているのだろうか。だとしたらなかなかに性格が悪い。そもそも先輩がいなくなってから急に絡んでくることが増えた蝶野さんの目的は何なのだろうか。蝶野さんと会うたびに頭の中で自問自答を繰り返していた。
結局、蝶野さんの誘いに返答せずに自宅付近まで来てしまった。正直、遊ぶなんて気分じゃなかったので、断ろうとしていた矢先帰り道を塞ぐように彼女が立ちはだかった。
「なーんで帰ろうとしてるんですかー?」
「ごめん。今日はそんな気分じゃないんだ」
返答を聞くなり眉をぴくりと上げて、険悪なオーラを纏い始めた。
「いつもいつもそうじゃないですか? もしかして私の事嫌いですか?うざいと思ってます?この場から消えて欲しいと思ってます?」
小柄な体形にも関わらず大型の猛獣に睨まれたかのような怒気に思わず後ずさった。ここまで怒ると思っていなかったので、内心かなり焦っていた。
「ちょっと落ち着いてよ! 今日変だぞ蝶野さん?」
何かに焦っているようなイラつきを隠そうとせず、必死の形相で俺の腕をがっしりと掴んできた。
「変なのは月山君の方じゃないですか……? 急に月影先輩と話さなくなるし、リア充してるくせに、いつも上の空だし……だから私、月山君を喜ばせようと思って……色々してるのに……!」
急に先輩と話さなくなった俺たちを見て、周りは何も言わなかったが違和感は感じていたらしい。確かに先輩のいない世界は寂しいし、会えるなら今すぐ会いに行きたい……けど、希やゆながいるこの世界も俺にとっては大切で先輩から任された以上、生き続けなくちゃいけない。
蝶野さんには一連の流れを話してあげたいが、頭がおかしくなったとドン引きされるのがオチだろう。だからどうしようと頭を捻られていると……。
「相変わらずストーカーみたいなことしてるのね蝶野さん?」
後ろから聞き馴染んだ声が聞こえてきた。おそらく用事を済ませて帰っていた希が俺らと鉢合わせた。変わらず蝶野さんとは仲が良くないみたいで、敵意のある目つきで睨みつけてきた。
「金原さん? やだな~私はただ元気がない月山君を思って……」
「蝶野さん。知らなかったらごめんだけど、私達付き合ってるから」
ん? 今なんて? 声に出そうとした瞬間、希が蝶野さんを払いのけ俺にべったりと抱きついてきた。想定外すぎる希の行動に俺も蝶野さんも度肝を抜かれてしまう。蝶野さんは目を白黒させてかなり慌てふためいている。というか俺も同じ状態に近い。
「希!? 急に何を……」
「それじゃあ蝶野さんバイバイ!」
場が混乱しているなか俺たちはその場を後にした。取り残された蝶野さんはその場で硬直していた。
あとがき 話をかくたびにクオリティが下がってくるぅ
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