第13話
希と喧嘩別れしてからというもの俺は魂の抜けたように脱力して生きていた。何にも身が入らなかった。この光景は異質だったようで影の薄い俺でも皆が心配そうな眼差しで見てきた。
一方の希は皆に心配をかけまいとしているのか普段通りに過ごしていた。そして今日もクラスの陽キャ集団に日比谷と文化祭の準備を進めていた。
俺は相変わらずやる気が起きず花ちゃんも帰っていいと言うので小さく「ありがとうございます」とだけ呟いて教室を後にした。
歩いている時、華雪先輩のところによろうかと考えたけどこんな血色の悪い顔見せるわけにはいかないよなと諦めて家に帰ることにした。早く学校をでようと自然と早足になる俺の前に見覚えのある黒髪ロングの年上美女が玄関に立ちふさがった。
「あなたが来ないせいでクソ暑い中、自分で飲み物買わなくちゃいけないし大変だったわ」
仁王立ちをして不機嫌な顔を露わにしていた。額の汗と赤くなった頬を見る感じだと最低でも十分以上はその場で待機していたことが予想出来た。
「ちょっと付き合いなさい。どうせ帰ってナニするだけでしょ?」
「一言多いよ……先輩」
乗り気は全くしないけど逃げられそうになかったので大人しく連行されることにした。
△
俺が連れていかれた場所は学校近くのマッ〇だった。終始、不機嫌な華雪先輩に冷たい飲み物とアイスクリームを献上すると少し表情が緩んだ。相変わらずチョロ……可愛らしい一面があるなと思わず微笑んでしまった。
そんな俺の顔をみるなり少しムッとした表情をしたが、俺の表情を見るとすぐに心配そうな顔を覗かせていた。
「数日見ないと思ったら大分やつれたわね」
「まあ、色々ありましたからね」
コーラを喉に流し込むとストローを噛んだ。華雪先輩は何も言わず頬杖を突きながら見つめていた。たまに見せる優しい顔に俺はつい甘えてしまう。
ゆっくりと事の経緯を話し始めた。
「……………〇ねばいいのに」
「すいません。イイ感じに慰める展開を予想させての辛辣すぎる展開は精神が持ちそうにないです」
さっきから貧乏ゆすりが止まらない彼女の一言は慰めどころかシンプルな暴言の一言で俺を一蹴した。
「あなたこういう話になるといつも被害者ズラするわよね? 本当にクソイン〇腐れ外道男〇ねばいいのに」
「ちょっと!!流石に言いすぎじゃない!?」
華雪先輩の言葉攻めに一部の客は羨ましそうな目線を送っているが、正直たまったもんじゃない。言葉攻めに周りの視線と俺の心が持ちそうにないのだけど、彼女は構わず続ける。
「そもそも彼女の気持ちを知ってて何故そういう思考に考え付くのかしら?あなたは人を馬鹿にしてるの?それとも女を泣かせる趣味でもあるの?いっぺん死ぬ?」
「すいませんすいません!今日の所はこれくらいで勘弁してくださいっ!」
いつの間にか俺は店内で土下座していた。周りの視線が超痛いけど、今の俺には最善の一手なのだからしょうがない。それくらい彼女の怒りが凄まじいと肌で感じた。
何とか機嫌を直してもらおうと更なる貢物を更に捧げ、何とか矛を収めて貰った訳だけど、その隙を見計らい彼女から助言をもらおうと本日二回目の土下座を披露した。
それくらい俺は切羽詰まった状態だった。それをみた華雪先輩は不承不承と俺に手を差し伸べてくださいました。
「全くしょうがない男ねあなたは」
俺のプライドの無さに呆れ返っていた。そんな彼女に「ありがとうございます!」とひたすら言っていた気がする。
「それじゃあ月山君、一緒に墜ちる覚悟を決めなさい」
「えっ? 一体何をなさるつもりで……?」
「手始めに首輪と手錠から始めようか?」
「だから何を!?」
一体ナニをする気なんですかね?目がマジな時は本当に何するか分からないからなこの人。
△
「ちょっと先輩、いい加減寝かせてよ」
「ダメよ。だってこんなんじゃ満足できないもの」
「だからってもう六回目だよ?さすがに疲れたよ」
「何を言ってるの? 夜はこれからよ。後、十個あるんだからなくなるまで続行よ」
「えっ?えぇ……じゃあ、眠眠打破買ってきていい?」
「むぅ……じゃあ、チョコ〇ナ〇ジャ〇ボ買ってきて」
「りょーかいです……」
深夜、俺の自宅にて華雪先輩と二人きりの密室。ようやくベットの軋む音が鳴りやんだ。目をこするながら俺はコンビニに向かおうと部屋をでた。
これからも彼女との延長戦は続くみたいだ。
「やっぱ私もいくぅ」
「じゃあ、いきますか」
こんな会話してるけど、何もしてないからね?本当だよ?
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